ボロフェスタ2016 THE 15th ANNIVERSARY

2016.10.28(fri)・29(sat)・30(sun)
@京都KBSホール&METRO

INTERVIEW

「ボロフェスタいつ終わるの?」鼎談

2016年10月11日

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今年15回目を迎えるボロフェスタ。その歴史は、4人の男からはじまりました。「にしき屋」と名乗る、それぞれに立派な本業を持つこの男たちは、なぜ手間ばかりかかってお金にならない「ボロフェスタ」を続けるのか。その真意を聴きました。

インタビュー&文:今井雄紀
文字起こし:船田かおり

ボロフェスタ主催「にしき屋」メンバー

ゆーきゃん(写真左)
シンガーソングライター。
いつだってよい音楽を創りたいと思っているけれど、ときどきはひどいライブもする。 駄作も書いた。浮いたり沈んだり、妬んだり焦ったり、人前に立つのも嫌な日さえ、ときどきある。
それでも、聞くこと、聴くこと、書くこと、読むこと、見ること、見えること、忘れては思い出して、 眠っては目覚め、歩いては立ち止まり、流れては澱み、生きること、言い切ること、そういうこと、こういうこと、すべてを指してゆーきゃんと言うのだと思う。

土龍(写真中央)
1976年生まれ、京都出身京都育ち。
京都は二条城近く、livehouse nanoの店長兼ブッキングマネージャー兼専属PAオペレーター
ボロフェスタには2002年立ち上げ当初から主催として参加。
派手好きの単純思考、自他とも認める、関西きってのパーティピープル。

飯田仁一郎(写真右)
Limited Express (has gone?)リーダー / BOROFESTA(ボロフェスタ)代表  / 音楽情報・音源配信OTOTOY編集長 / リアル脱出ゲームSCRAPの取締役 / JUNK Lab Records主催 / Less Than TVをリスペクト! 

ボロフェスタ、もうやめてもいいのでは?

ー今日は御三方に、「古参ボロファン」という立場からいろいろ聞きたいと思っています。いちばんのテーマは「なんでまだやってるの!?」という点。やめる理由も機会も、いくつもあったじゃないですか? 京都大学西部講堂(※1)が使えなくなった。初代代表の加藤さん(※2)がやめる。音楽フェス飽和時代の到来。飯田さんが上京する、ゆーきゃんが富山に帰る……。どう見ても儲かってないし、毎年やるの、大変でしょ? 

飯田 大変(笑)。

ーただでさえ大変なのに、ステージを増やしたり、綱引きをやったり、毎年より大変にしようとするし……。

飯田 してるね(笑)。

ーもっとこなれた感じにもできるはずなんですよ。マニュアル化していけば。他のフェスなんか、そうやってコストを下げてますし。KBSホールにうつって2回目くらいのとき、お客さんとして遊びに来て、ちょっとだけ思ったんですよね。「こなれてきたな。完成したな」って。それを3人にいったらみんな一様に、「今年おもんないな……」みたいなこといってて。

土龍 KBSホール 2年目、3年目くらいはそうやったね。2011年くらいかな。初日に「やばい、ちょっとこれできあがってもうたな」って飯田と喋ってたら、その次の日のオープニングで照明がトラブって……むしろそれでみんな「やっぱこうやないと!」みたいになったっていう(笑)。

飯田 いやー、個々の理由は違うんじゃないかなあ、3人の。

boro2016_3_06飯田仁一郎

 

ー続けてる理由。

飯田 ちょっと前までのモチベーションは「戻ってこれる場所にしたい」っていうことやった。おれ、飲み会嫌いやし、同窓会全く行かへんねんけど、でもこの場所はみんなが戻ってこれる場所になったらいいなと思って。多分これまで関わってくれた人を数えたら、スタッフだけでも1,000人超えるねん。その1,000人の顔って何回でも見たいやん。スタッフ同士もそうやと思う。ボロフェスタに来て、1年ぶりか3年ぶりかわからんけど、SNSでも全く交流ないふるい友だちに会えたらうれしいし、東京からでも「どうせ誰かおるやろ」ってふらっと遊びに来てもらえるような、それこそ地域の祭りみたいな感じでやれたらと、ここ5年ぐらいは思ってた。でも、いまは違うねんな…… それが何かは…… ちょっと考えるわ。はい次! 土龍!

土龍 おれは、nano(※)に出てる若いやつらに背中見せるためかな。「おっさんがこんなおもろいことやってんねんぞ!」「おっさんはオーガナイザーっていう立場でこれやってんねんぞ」「じゃあお前らは、何ができんねん?」と、背中でいってるつもりではいる。慕ってくれる若い子たちに「あのおっさん、ちっちゃいハコをやっているだけじゃなくてこんなこともやってんねや…… すげえな」って。「ボロフェスタに出るのが目標です」っていわれると正直冷めるんやけどな。目指すはフジロックのグリーンステージやろって。

飯田 なるほど。それはわかるな。ゆーきゃんは……?

ゆーきゃんは2002年から一貫して、ボロフェスタをやめたいと思っている

ゆーきゃん ボロフェスタをやめない理由…… 実はぼくは、2002年から一貫してやめたいといい続けている男で……。

ーなんと!? やめたいっていうのは「イベントをもう終わりにしよう」なのか「ぼくが抜けよう」なのかでいうと?

ゆーきゃん 「ぼくが抜けたい」といい続けてきた。加藤さんには「何回ゆーきゃんの『おれやめます』聞いたか……」っていわれてるぐらいで。ボロフェスタで見たい景色ははっきりあるねん。ジャンル/世代/国籍/シーンなにもかも関係なく、ただ音楽のことを好きな人が集まって、どんな音楽か音が鳴ってみるまでわからないのにそこに行って、「ああ、よかった」といってもらえる場所を作りたいってのは、ある。ボロフェスタをやる度にある部分ではそれが叶って。でもある部分では、やっぱりアーティスト名とか、鳴ってる音とかで「これはあんま好きじゃないな」とか「これはしってるから見とこう」とか「しらないから見なくていいや」となってて、もどかしく思う。で、勝手にダメージを受けて「なんのためにおれはやってるんやろうな」みたいな気持ちになって……。

ーそれはどういうタイミングでなるんですか、当日?

ゆーきゃん 当日なる。

土龍 まさかやなあ。当日て(笑)。 

boro2016_3_02ゆーきゃん

 

ー何時ぐらいですか? 3日間ある、どこのタイミングで?

ゆーきゃん いやもう、わりと、わりとしょっちゅう(笑)。 落ちるっていうより、苛立つかなあ。それが悔しいっていう気持ちでまたやりたいなあって思うのと、おれがやってること意味ないんちゃうかと思うのと、あと、まあ自分の能力が、そこに追いついていなくてこの場所に自分が貢献できているのかみたいなことを考えるとやっぱりおれはいらへんのちゃうかみたいなことを思うのといろいろ気持ちがないまぜになって、いつもやめたいなと思う。はじめる前はだいたい、翠灯舎(※)の社長と飲みにいって「ボロフェスタはもうだめだ。おれもう来年抜ける」みたいなことをいってます。

ーめんどくせえ! でも結局、毎年やっちゃうわけですよね?

ゆーきゃん 即興演奏と一緒で。30分間の演奏の中で、29分間ゴミみたいな内容でも、1分間だけ、1分間だけすごい演奏があれば、続けていけるよって、ぼくの尊敬する即興演奏のドラマーがいってたんやけど。それとすごい似てる。

土龍 そういう瞬間がある、と。

ゆーきゃん 理想にはいつも程遠いんやけど、ほんの一瞬、その理想が叶ったって思う瞬間があって、その光景をもう1回みたいと思って、いつも。例えば2014年、リミエキ(※)のライブの前にフロアでodd eyes(※)と……。

土龍 contact gonzo。

ゆーきゃん そうそう。contact gonzoとが一緒にやって。みんなが出て行こうとするところにodd eyesの演奏がはじまって。フロアで演奏してるから出るに出られず(笑)。 その間に、contact gonzoがパフォーマンスとして段ボールを投げ始めて。客席にまでそれが飛んでいって、お客さんがその段ボールを拾ってまた投げ返し…… みたいな。阿鼻叫喚になったところで、 リミエキが演奏をはじめるっていう。

土龍 あれはよかったね。

ゆーきゃん そう。いままでそういう、ハードコアとかアンダーグラウンド文化に触れたことのない人が「なんかすごいことが起きてる!」と直感的に感じて、振り返ってリミエキに走っていく…… その様子を見ると、ああ、今年のボロフェスタは君のためにあったんだねって。

boro2016_3_04odd eyes × contact Gonzo

 

ーいい話。でもちょっと整理させてください。本番中に苛立って、落ち込んで、もう来年やめようと思ってたところでそういうシーンを見たら、その瞬間一気に回復して、次の年まで持続するだけのやる気が得られるってことでいいですか?

ゆーきゃん えっと……(笑)。 

ーその間に翠灯舎の社長は挟むんですか?

ゆーきゃん 時系列的にいうと、はじめる前にまずけっこう落ちる。もうつらいなあ、やめたいなあ。はじまっても、悔しいなあ力不足だなあという気持ちの方が先に来るんだけど、そこでちょっと持ち直して、この状況をぼくが望むような形にするためにはどうしたらいいだろうかと考える。ここで踏みとどまって考えて行動できるのは、さっきの2012年の話みたいな、すごくいい景色を見たことがあるからだろうね。だからそうだな……。なんというか、モチベーションっていう意味では2人よりもぶれぶれで「やめたい、最高、やめたい、最高」みたいなのの繰り返し。

飯田 めんどくさすぎるやろ!

ゆーきゃん ごめん……(笑)。ただでも、本当にいっちばんやばかったのは西部講堂が使えなくなったとき。あのとき続けた理由については、誰も言語化できひんと思う。

最大のピンチは、2008年に訪れた

ーMETRO(※)と、その真正面にある鴨川河川敷を使って行われた2008年ですね。

飯田 あのまま終わるのがイヤで続けたよな。

土龍 今年ボロフェスタやらへんのってなんかイヤじゃない? と

飯田 ここで終わったらつまんねえよってなって。

土龍 ちょうどジャック(※)がMETROの店長になったタイミングで「メトロがめっちゃ融通きくぞ! いまなら!」と(笑)。広い会場は無理やけど、メトロで無茶しようや!みたいな話をした記憶はある。

boro2016_3_03土龍

 

飯田 あの頃はちょっと狂ってたな。いちばん無謀やったときかもしれん。いま思うと、ボロを絶やしたくないふりして、実はおれらの方がフェスにしがみついてたな。バンドが相当ごちゃごちゃしてたときやったし。Live Junk(※)ってイベントをやってみたり、サルカルチャー(※)をはじめてみたり…… フェスブームが到来してて、フェスにむちゃくちゃ可能性を感じてたころやった。

ゆーきゃん ぼくも、個人的に2008年は本当に危機的状況やった。西部講堂はもう使えなくなったし、東京に出てみたものの何もできることはないし、セブンイレブンですべってこけて骨折るし……。

土龍 折ってた!

ゆーきゃん それまででいちばん「もういいかな」って思ってたんやけど、あのときボロフェスタにとって幸運だったのは、DO ITがあったこと。DO ITは、東北のDIYフェスなんやけど、2008年のはスペシャル・ヴァージョンで、山形の七日町ってとこの元映画館に山形のバンドマンが集まって、椅子全部ねじ外してとっぱらってステージ3つ作ってやってた。いうたらハードコアからのボロフェスタへの回答、というか。この人(飯田を指さしながら)も、オーガナイザーに加わってて。そこにぼくは、当時働いてたサンレインレコーズの店員として、出店しに行ってんな。そこで見た景色がすごすぎて……。

飯田 すごかった。大トリがやってるくらいのときに、映画館の2階でおれとゆーきゃんと、あと何人かで車座になって、「これはすごいことが起こってるぞ」って話をしたもんな。負けてられへんでと。

ゆーきゃん FLUID(※)も出演してたんやけど、ジャックがわざわざ電話してきたもんな。お互い会場にいるのに。

飯田 これはやばいでって。

—未だにいいますよね。DO ITがいかにすごかったかって、行ってた人みんな言う。

山形のDIYフェス、DO ITの衝撃

ゆーきゃん まだフェスの絶対数自体が少ない時期だったとはいえ、山形のフェスに、東京・新潟や、青森・盛岡・秋田と、東日本中から「山形ですごいことがはじまったって聞いたからきました!」って集まってるんやで。まだ誰も見たことない、何の保証もないイベントやのに。その熱量たるや……あの日あの場所でbloodthirsty butchersを観ていたひとたちの表情は、いままでどんな見てきたどんな客よりも嬉しそうで、幸せそうで、熱狂してた。

—気合いの入ったお客さんが集まってたわけですね。

ゆーきゃん そう。それで何がうれしかったって、DO ITのスタッフみんなが、「ボロフェスタの影響です」って、「飯田さんのおかげです」とか「ジャックさんがいてくれたからです」とかいうねん。それを聞いて、責任を感じたというか、なんかおれらがやりたくないから、やる気なくなったからやめるってなんか違うなと思って。種を蒔いてたんだなと。西部講堂でやってたときのエンドロールで「ボロフェスタによって日本中に点在するシーンが繋がって みんなのプリミティブな気持ちが、みんなが新しいものとかいいものを求める、その起爆剤になればうれしいです」みたいなことを書いて流してたんやけど、まさにそれが起きてるなと思って。山形にこれがある限り、ボロフェスタはやめたらあかんなって思った。

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—DO ITを見て、文字通り骨を折ってでも、続けなければならないと思ったわけですね。

ゆーきゃん でも実際めっちゃ大変やった。METROの前、鴨川を挟んで野外ステージ作ったやん。市から出た許可が「昼間のみの利用」やったから、毎晩何にもない、まっさらな状態にしないといけない。朝から単管(※)組んで、夕方バラして、翌朝また組んで……。それを三日間。

ーステージを組み上げるのに、どれくらいかかるんですか?

土龍 だんだん早くなってたよな(笑)。 

ゆーきゃん 組むのは1時間、バラすのは1時間半ぐらいかな。そうそう、事前に周辺の全部のマンションに、「ボロフェスタといいます。音を出します。何か苦情があればぼくまで」ってポスティングをしてたねんな。そしたら、何日目か忘れたけど、バラしをしているときに隣のマンションの人から電話がかかってきて……。「うるさいです。うちの祖父は身体が弱いんです。あなたたちのやりたいことのためにね、うちのじいちゃん死んでもいいんですか」っていわれて。

ーそれは……なんて答えたんですか?

ゆーきゃん おっしゃる通りです、こういうつもりでやってたんですけど、音もキチンとどう聞こえるかぼくらなりに確かめて、市とも確認して、これくらいだったらいいっていわれたからやってるんですよって、でもご迷惑をおかけして申し訳ありません、音については、できるだけのことをしますって。基本的にそれをずっといい続けて。でも納得してもらえなくて、市会議員に提訴するっていう話になって…… それから「河川敷の公園は音を出してはいけません」っていうルールが京都市にできるっていう。

ーボロのせいで出せなくなっちゃったんですね……。

飯田 2008年はほんまにしんどかったね。でも、だからこそかな。あのときにはじめて来てくれたスタッフで、いまも付き合いの深い、ボロには不可欠って存在になってるやつは多い。 

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—そして2009年、KBSホールの登場。

ゆーきゃん KBSホールでやろうって話になったとき、ぼくらにできる、西部講堂という下駄を履かないボロフェスタを、再定義しなきゃいけないんじゃないか。DO ITであそこまで言ってもらったからには、惰性じゃ続けられないよなってのを、すごく考えた。まあでも、KBSホールの1年目は超インディー寄りのブッキングをしてしまって収支的には厳しかった(笑)。 

土龍 そんなひどい赤字ではなかったけど。

飯田 2009年の商業的な失敗は、教訓として刻まれてるよな。

土龍 バランスとか、世代の若いバンドってのをしっかり呼ばなあかんねという話をした。ブッキングのバランスをしっかり考えるようになったのは、2010年からやわ。

飯田 ボロフェスタじゃなくて、西部講堂やから人が来てたんやっていうのを思い知らされた。まず、アーティストの反応が悪いねん。「西部講堂じゃないんですね……」となる。KBSホールにうつって1、2年目はそこが難しいとこやった。そんな中でもありがたかったのは、KBSホールの山本さん(※)がすごく協力的やったこと。

土龍 山本さんじゃなかったら無理やったな。

飯田 やっぱしこっち側の目線に立ってくれる、そういう人がいると続けられるよね。

土龍 スタッフの顔見るのが好きなんよねーみたいにいうてくれはる人やからな。

ーたまたまスタッフが会ったら、「メーリス盛り上がってんなー!」とおっしゃってたらしいですよ。

土龍 スタッフのメーリングリストに入ってもろてるからな(笑)。

飯田 そうやった!

土龍 去年いうてくれはってん。「来年はおれもメーリス入れてー」って。

—素晴らしい人に支えてもらってますね。

ゆーきゃん 本当にね。

ボロフェスタはプライドそのもの

ー飯田さんがいまも続けている理由は、まとまりましたか?

飯田 自分にとってはもうアイデンティティなんやなって。ボロもバンドも「ビジネスにはならへんのになんでやってるんですか」っていわれるけど、アイデンティティやから。アイデンティティだからこそ、絶対かっこよくないといけないし、面白くないといけない。自分のプライドそのものやから、頑張れるんやと。音楽をやっている理由と、ボロフェスタを続ける理由は似てる。ぼくは。

ー揚げ足を取るようで悪いんですけど、そこにSCRAP(※)とOTOTOY(※)は出てこないんですね。全部辞めても、バンドとボロだけは続けるということでいいですか?

飯田 SCRAPとOTOTOY…… ああどうやろうな。どれも永遠にやり続けるとは言えない。それは、バンドもそう。もうさすがに10代、20代じゃないから、やれるならやりたいと思うぐらいで。例えば、考えたくないけど親が亡くなって、メンバーが地元に帰らざるを得ないとなったらそれはもう仕方がないこと。ボーカルのYUKARIちゃんがいいひんくなったらうちのバンドはなくなるやろうし、常にその覚悟はしてるかな。なんか、バンドにしろボロにしろ、昔持ってた「ずっと続けることがかっこいい」っていう考え方はなくなったな。別にそうじゃないと思ってる。

ー続けることじゃなかったら、何がかっこいいんですか?

飯田 いまそれがかっこよければ、かっこいい。例えばイースタンユースはいまかっこいいからかっこいいわけで、それは彼らの経歴やキャリアとはある意味関係ない。だから年上でも年下でも、いまかっこいいことが、かっこいい。そうなってきたかな。考え方が変わってる。変わってきたよね。

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ーゆーきゃんさんはしょっちゅうやめたくなってるということですが、2人は、そう思ったことはないですか?

飯田 あるあるある! あるで。小さいけど。今日、この取材に向かう、京都駅からのタクシーの中で思ったな。でも、ここについてみんなの顔見たら、やっぱやるしかないっしょって。そんな程度の、ほんとちっちゃい範囲。全然本気で思ってない。

土龍 おれ昨日、山本さんに電話して、来年のKBSホールの日程押さえたけどな(笑)。 やめようと思ったことはないけど、加藤さんがやめるってなったとき、おれか飯田、どっちかがやめるっていったらもう無理やろうなとは思った。途中から主催メンバーも増えたけど、4人で作ってきたものっていうのがあると思ってるし。もしそのときが来たら、もうこれで最後ですっていって。お客さんばーってきて。わーなって。かんぱーいってなって、終われればいいかな。誰が言い出すのかはわからんし予定もないけど、「やめよか」となったときは、全員「そうやんな」と納得してる気がする。誰も、しがみつきはせえへんやろうなと。

ロボピッチャー加藤の脱退

ー加藤さんがやめるときには、どんな話し合いが持たれたんですか?

飯田 なんもないよ。もう、彼には必然がなかったから。リアル脱出ゲームっていうすごく大事なものができて、音楽への情熱は相当減ってた。ロボピッチャーっていう加藤のバンド自体がほとんど動いてなかったっていうのもあるけど、それを差し引いても、おれら3人との温度差は明らかやったから。おれも土龍もゆーきゃんも、自分のバンドとか関係なく、ボロフェスタで楽しいことをし続けたかった。そこに溝ができた以上、離れなしゃあないし、3人とも、いや、本人含めて4人とも、なんとも思わへんかった。そりゃそうでしょっていう感じ。

土龍 なんも思わへんかったなー。実際加藤さんがそんとき何をしてたか、何が人生の中心に来てるかっていうのは見ててわかったし。加藤さん自身が、おれは音楽に集中できなくなったとも言ってたし。それならそれで。「そんなやついらねえよ!」とかじゃなくて、「それでええやん」って。すごく自然なことやった。

ー加藤さんが抜けた年、イベントラストのエンドロールの曲を、ロボピッチャーの『キノコ』にしてましたよね。

土龍 あったね。加藤さんが抜けた年かな。飯田が選んだ。

飯田 おれの選ぶエンドロールは泣かす。常にメッセージが込められてるから(笑)。

土龍 いちいち言うてくるからな。

飯田 遊びにだけ来てた加藤が帰ろうとしてて、スタッフみんなで引き止めたらしいからな(笑)。「もうちょっと、もうちょっとだけいた方がいいんじゃないですか?」って。

ーあれは、はなむけだったんですね。

飯田 まさにそうやったね。

京都のボランティアスタッフは、アホばっかり

飯田 まあでも京都面白い。東京でスタッフ集めたってさ、こんなんならへんねんな。

ゆーきゃん 変な街よね。

飯田 どっかでビジネスとか、キャリアとか、就職活動とか、そういうことちゃんと考えてくんねん、東京の子達って。

ーOTOTOYでもそうなんですか?

飯田 OTOTOYでもそう。

土龍 大学生が多いからな?

飯田 京都の大学生はそんなこと考えてこーへんねん。

土龍 すごい、夢しか見てへん。アホばっかりや。

ーいるとは思いますよ、いるとは思うけど、ここには近寄らない。

ゆーきゃん ビジネスじゃないからかな。

土龍 ビジネスじゃないもんなあ……。

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ー儲けてる人がいないっていうのは大事なことかもしれない。

ゆーきゃん それが多分、透けて見えるんだろうね。

—金のにおいが全然しないぞと。

ゆーきゃん とても清い関係。それが多分、いちどスタッフをしたみんなが皮膚感覚でボロフェスタを好きになる理由だし、ボロフェスタを続けようと思う理由でもあると思う。

土龍 儲かってるフェス、腕相撲大会とかせえへんよな。

ゆーきゃん そうやね。ああいうアイディアは、DO ITでやってた「ロックスター選手権」に習った。ロックスター感のある参加者が集まって、ロックスターっぽことをする、それだけの企画(笑)

飯田 去年の綱引きとかも、ほんまようわからんもんな。誰も得せえへんし(笑)。

土龍 でも去年ゆーきゃんの発案で、綱引きやったやん? NATURE DANGER GANG(※)が参加してくれたやんか。去年のボロフェスタの話になると、その話ばっかされたりする。

ゆーきゃん 非現実というか、社会のルールから逸脱はしてるんやけど、道徳からずれる感じではない。そういう瞬間がすごい好き。みんなお金とか、キャリアとかじゃない部分で興味持ってくれるのは、そういうところに共感してくれてるからかなって思ったりするし。NATURE DANGER GANGもさ、綱引きしたってなんのいいこともないわけ(笑)。 岸田繁さん(※)が餅つくのもそうやんね。なんかそういう、ソロバンでは計れない楽しさみたいなものを結晶化できるのが、ものすごい喜びだなあと思う。このために生きてるんやって瞬間を自分たちで作り出せるのはなんて素晴らしいことだろうと思う。

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メジャーの人にとっては逆に敷居が高い

飯田 クラムボンが10なん年ぶりに帰ってくる感じとかも本当にいいなあと思う。おれにとってのミトさん(※)とかがそうやけど、ブッキングが、アーティストとイベントの関係じゃなくて、個人と個人の関係に基づいてできるようになってたりするやんか。ありがたいことに、「ボロフェスタに出ませんか?」って言うだけで、「喜んで!」って言ってもらえる人が増えてきた。これは、西部講堂を離れなかったらつかなかった力かもしれん。岡崎体育くん(※)なんかさ、いまやもう飛ぶ鳥を落とす勢いやけど、土龍との繋がりがあるから忙しいなか来てくれるわけやん。大森靖子さん(※)だって、ゆーきゃんとのつながりがベースにあってのことやと思うし。昔から関わってる人たちがでっかくなって来てくれるっていうのは、ありがたいし、うれしい。去年のくるり(※)とかもまさにそうやもんね。

土龍 そうやね。

飯田 ありがたい話ですよ。

ーマネージャーさんも含めて、ボロフェスタとの関係性とか、出る意味をわかってらっしゃるのがすごいですね。

土龍 うん。ありがたいよな。

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ゆーきゃん メジャーの人にとっては逆に敷居が高いって声も聞く。インディーフェス、センスのいいインディーフェスってイメージがあるらしくてメジャーアーティストが呼ばれると、認められた感じがして嬉しいと。去年出てもらったパスピエにも、毛色が違う私達を呼んでくれてありがとう、って、マネージャーさんがわざわざお礼のメールを下さった。

ーハクがつくってことですかね?

ゆーきゃん どうなんやろ。ずっと出たかったけど、呼ばれると思いませんでしたって。

飯田 いい話やなー!

ゆーきゃん ブッキングの美学みたいなものを貫いてきたからこそやろうなと思う。昔はよく、誰を呼ぶ呼ばないで喧嘩してたもんな。あの喧嘩があるから、ボロフェスタのラインナップはえも言われぬ雰囲気を放つんやなと。

東京のバンドを呼ぶ条件は「リキッドをソールドアウトにできること」

ー美学を横において集客を優先したブッキングってこれまでなかったんですか?

飯田 ない。実はものすごい研究してるから。ダサいアーティストなんかいなくて、ブッキングとか出順が、ダサく見せるんよ。例えばパスピエ(※)はすごいかっこいいけど、ガールズバンドがいっぱい出るようなイベントよりも、昨年のボロフェスタみたいなところに出ると、全く見え方が違う。そうやって調整してるから、美学を貫かなかったことってのはないね。

—具体的な基準みたいなものはあるんですか? 呼ぶ呼ばないの。

飯田 東京のメジャーアーティストに関しては、明確に数字を求めてる。リキッドルーム(※)を埋められないときついですって。リキッド埋めても、京都で呼べるのは100人やから。ありがたいことに「出してくれ出してくれ」って、めっちゃくるんやけど、先輩でも実績のある人でも、今集客がなかったらボロフェスタ出ても難しいと思いますってはっきり言う。あとスターが集まった企画バンド的なバンドは、呼びたいと思わないかな。バンドとしての毎日の努力の結晶をぶつけて欲しいし。基準というか、そういうラインみたいなものはすごいあるかな。そういうところでブッキングのクオリティは担保されてるんやと思う。

ー京都のバンドはどうでしょう?

飯田 京都のバンドは、とにかく勢い。バンドの勢いと、でもやっぱ、集客大事かな、めっちゃ大事。ただ、東京のようにリキッド埋めろみたいなことは言わない。nanoに出てちゃんと沸かしてるかとか、スタッフしてでもやりたいですって気合いがあるかとかを大事にしてる。

土龍 bed(※)とかシンプルなんやけど、今年出した新譜がめちゃくちゃかっこよかったから今年は呼びたいねって。勢いって、そういうことかな。

飯田 京都/関西はそうやね。集客大事やけど、それだけじゃない。「まじでいい」と思えれば、それでいいねん。まじでいいバンドなんか日本中山ほどいるんやけど、もちろん全部呼ぶのは無理やから、まじでいいバンドなら、京都/関西のバンドっていう感じ。

土龍 そう、関西のバンドで選びたいよね。

飯田 そこは、基準になっているね。

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ゆーきゃん ストーリーとかはすごい考える。今このバンドがボロフェスタに出る意味、みたいな。どうして、去年でも来年でもなくて今年なのか。こないだ新譜が出たとか、ワンマンできるくらいに成長してきたとか解散するって言ってるとか……。そういうことを踏まえて、少なくとも僕らの中でこのバンドを呼ぶってのはどういうことなのか、言語化できているっていうのはある。それはたぶん、ボロフェスタの強み。

土龍 一個一個、なんでこのバンドを呼んだんやっていう理由が「今人気やし」とかじゃなくて、全部ストーリーはあるんだぜって。でもほんまそうやな。1年目のヘッドライナーやったクラムボンが、10数年経っても、かっこいいとこはそのまま戻ってきてくれるのも最高やし、何度も出演して、ずっとボロフェスタを引っ張ってくれてる曽我部さんがついにサニーデイ・サービス(※)で出るっていうのもテンション上がる。

飯田 MOROHA(※)が今年でるのは、めちゃくちゃストーリーがあるねん。2011年、前祭にあたるナノボロフェスタに出演してもらったんやけど、本祭に呼ばなかったことにMCで噛み付いてきた。それがめっちゃかっこ良かったんやけど、やっぱりリキッド埋めてないから呼ばれへんかった。

—呼ばない理由は、説明したんですか?

飯田 ちゃんとした。で、その3年後に「本祭のロビーステージに出ませんか?」ってオファーしたら、「僕らはメインステージに立ちたい。だから、リキッド埋めたら呼んでください」って断ってきた。そして今年、ほんまにリキッドを埋めた!ライブもすごく良くて、その日の夜に「出ていただけませんか?」ってメール出したら、既にスケジュールがあったのになんとか調整して出演してもらえることになったんよ。

土龍 今年一のストーリーやな。

ボロフェスタが終わるとき

ー最後は、どうやって終わると思います?

飯田 時期が来るよ。加藤が抜けた時に思った。いずれ必然のタイミングが来るやろなって。そんときはもう全員が納得するというか。ああ、そんな時期だねって思うんじゃないのかな。

ゆーきゃん 役割を終えたら終わるんじゃないの? ボロフェスタが京都にできることってまだまだいっぱいあるんだと思う。求められているから、お客さんが来てくれるし、続いているわけで。求められないのに続けるってのは、ことフェスにおいてそれは、あまりかっこいいことじゃないと思うし。

土龍 確かにね。

ゆーきゃん とはいえその需要の有無ってのは、皮膚感覚でしかないから、やっぱり必然ってことになるのかな。

ー逆に言うとですよ。別に来年開催されなくても、おかしくないってことですよね? 今年で終わってもおかしくない。

飯田 いや、来年はやるな。KBSホールおさえちゃったから。

土龍 もうブッキングも始めてるし。

ゆーきゃん 一部決まってるしね。 

—今年来ないと損ですよって言おうと思ったのに……。

飯田 いや、それはその通り。ぜったい何かしら事件は起きるし、ゆーきゃんのテンションは揺れまくるし……。

土龍 ボロフェスタ2016、来な損やで!!boro2016_3_09

 

※ 西部講堂 京都大学構内にある1200人収容の講堂。演劇・音楽のイベントが盛んに行われ、ロックの聖地と言われている。

※ 加藤さん 加藤隆生。ロックバンド「ロボピッチャー」のボーカルにして、初代ボロフェスタ代表。現在は、リアル脱出ゲームを運営する株式会社SCRAPの代表。

※ nano 土龍が店長を務める京都のライブハウス。

※ 翠灯舎 ボロフェスタのスタッフであった田中郁后が起こした京都のWeb制作会社。

※ リミエキ 飯田がギタリストを担当する京都発のバンド。主催バンドでもあるLimited Express (has gone?)の略称。

※ odd eyes 京都のハードコア・パンク バンド。ジャンルやシーン、昼夜の壁を越え、様々なパーティで鮮烈な印象を残すライブは圧巻。

※ contact gonzo 一見するとただの喧嘩や殴り合いのようにも見える独特のパフォーマンスを即興で行う集団。

※ 単管 鉄でできた、ドアノブぐらいの太さのパイプ。かつてボロフェスタのステージはこれを組み合わせ、完全DIYでつくられていた。

※ SCRAP 元ボロフェスタ代表加藤隆生が起こした会社。飯田も役員として在籍している。全国でリアル脱出ゲームを開催中。

※ OTOTOY 飯田が編集長をつとめる音楽配信&音楽情報サイト。http://ototoy.jp

※ 山本さん KBSホールの支配人。声楽家としても活動。2015年nanoボロフェスタに出演した。

※ リキッドルーム 東京都渋谷区にある東京を代表するライブハウス。収容人数は、約1000人。

※ METRO 日本最古のクラブ・ライブハウス。2007年よりボロフェスタ夜の部の会場。

※ ジャック ボロフェスタ常連のバンドFLUIDのボーカル/ギター/サンプラー。最近まで、METROの店長を務めていた。ボロフェスタのスタッフとして活躍していた。

※ LIVE JUNK アンダーグラウンドを盛り上げることをコンセプトに飯田とゆーきゃんで行っていたライヴ・イベント。

※ サルカルチャー 飯田、ゆーきゃん、加藤等で2008年に大阪城野外音楽堂で行ったフェス。

※ FLUID 飯田やゆーきゃんと同世代のジャックが率いる京都で活動中のオルタナティブ・パンク・バンド。

※ NATURE DANGER GANG 新宿LOFTを拠点に、ハードコアやパンクの エッセンスをレイブ・ベースミュージックに落とし込んだ楽曲を展開する日本の大所帯バンド。 

※ミトさん クラムボンのリーダー。ボロフェスタでは、初年度のトリをクラムボンが飾った。

※ 岡崎体育くん 京都出身のトラックメイカー&シンガー。意表をついたMVが話題に上り一躍音楽シーンの時の人に。29日土曜日にKBSホールに出演。

※  パスピエ ドビュッシー作曲「ベルガマスク組曲」に由来する名をもつポップ・バンド。メンバー自身の手によるアートワークも話題。

※ bed 京都のインディ/エモ・シーンを支える4人組。ジャンルや世代を超えてバンドマンからの支持も厚い。

※ サニーデイ・サービス 主催バンドをのぞけばこれまで最多の出演回数を誇り、ボロフェスタの精神的支柱でさえあった曽我部恵一氏が、今年満を持して自身のリーダーバンド・サニーデイ・サービスで登場する。

※ MOROHA 今年のボロフェスタブッキング随一のストーリーでもって30日日曜に出演決定した二人組のラップユニット。涙なしではそのギター、声、言葉は聴けない。

※ 岸田繁 くるりのギターボーカル。飯田の大学時代のサークルの先輩でもある。

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