モノクロの筆致で描く、情けなくて愛しい人
会場から熱視線が送られる中、15時過ぎのGREEN SIDE STAGEに登場したのはルサンチマン。フロントの3人が順番にエフェクターを入れたことで「プチップチップチッ」とスイッチの音が聞こえたのだが、意図していないであろうこの些細な動作がたまらなく格好良くて、一音目も鳴っていないのに最高のアクトを確信してしまった。
そんな微細な仕草が目に留まってしまうほど、彼らがミニマムであることもまた事実。真っ黒な衣装や色の無いシンプルな照明、自分の声さえ楽器のひとつに組み込んでしまうインスト曲「fossil」に象徴される理性的なアティチュードのいずれもが示唆するのは、確かなテクニックに裏付けられたルサンチマンの音楽が何よりも雄弁であることだ。
中野(Gt)の鋭いイントロが静寂を切り裂く「荻窪」でも、変わらないでほしいと幾度もすがりつく「なさけないうた」でも描かれている、悩みに悩み続ける主人公。北(Vo&Gt)の張り上げるフラジャイルなヴォーカルで綴られた、情けない彼が愛しくてたまらない。
Text by 横堀つばさ
Photo by なかむらるか