心を掴んで、揺らす。大森靖子。
「生きる」なかで感じる不条理や無力感、あるいはふとした違和感。彼女はそっと掬い上げ、優しく肯定する。
そんな音楽が、そこには確かにあった。
BIG RIGHT STAGEのど真ん中、ギター1本でピンスポットに照らされる大森靖子。
その姿に、期待と熱気が高まる。
「手作りのボロフェスタに!」と演奏した4曲目「ハンドメイドホーム」では、時折ギターを大きく掲げ、力強く明るい演奏で観客のボルテージを一気に引き上げた。
一転して9曲目「死神」では、その歌声と表情に誰もが息を呑む。
言葉を噛み締めるように歌い、訴えかける姿に、ここでしか味わえない“大森靖子の音楽”があった。
全12曲を駆け抜けたステージ。
終演後に「見れてよかった」「すごかった」と語る観客の多さは、彼女の音楽と空間が多くの人の心を動かしたことを物語っていた。
Text by はっとり あや
Photo by 中田 絢子



