小さなことでも、勇気を出してアクションを
ナノボロ2022、1日目に引き続き2日目にもトークイベントが開催された。「ウクライナ避難民の方の現状と自分たちにできること」をテーマとし、2日目の今日は、実際にウクライナから京都へ避難されてきたアナスタシア・エシポワさん、オレクサンドラ・パクホメンコさん(通称サーシャさん)のお2人、そして京都にあるホテル、IMU HOTEL KYOTOから片岡大樹さんをお迎えし、主宰のひとりである飯田仁一郎との対談の形式で進められた。
2日目はウクライナ避難民の方々の現状に加え、日本での避難民支援についても焦点を当てるトークになった。飯田は「僕はまっすぐ聞きます、生の声を聞きます」と話し、ゲストの3人に素直な質問を投げかけていった。話の流れは、侵略を受けたときの現状やなぜ避難したのか、というウクライナ避難民の方への質問を中心に、後半は日本での避難民受け入れの支援についての現状や苦悩など、片岡さんへの質問を中心にという形である。今回はその一部を紹介する。
飯田:
ロシアから避難が始まった時どう思いましたか?
アナスタシアさん:
最初から信じられませんでした。今もたまに起こっていることが信じられません。毎日毎日怖かったです。もうすぐ戦争が始まるという噂はあったけど嘘だと思っていました。ロシアは私にとって親しい国で、親戚、友人、知り合いが住んでいますので、全然信じられなかったです。
サーシャさん:
私は期待をしていませんでした。そしてちょっと怖かったです。ふたりとも同じ気持ちです。
ロシアに親戚や友人が住んでいて、ウクライナとロシアは関係の深い国同士だと思っていたため、戦争に対して全く信じられなかったこと、怖かった当時の気持ちを私たちに伝えてくれた。今もまだウクライナに住む家族や親戚は毎日戦争の音や爆発を聞きずっと恐怖と不安で緊張状態が続いているようだ。そのせいか戦争についてあまり話したくない様子だという。電話をしても自分たちの普段の暮らしについてしか話したがらない、とアナスタシアさんは話す。
「なぜ日本に?」と、飯田から避難先を日本に選んだ理由を聞かれると、「日本についてすごく興味があったから」とふたりは答える。日本に来る機会をずっと狙っていたらしく、今回は日本語を学べるという避難民プログラムを使って避難されてきた。家族や親戚を残して避難することへは少し罪悪感があったというが、周りのサポートのおかげで今は日本の暮らしを楽しめているという。
今回日本人ゲストとして登壇した片岡さんは、日本での避難民受け入れについて話した。片岡さんの働くIMU HOTEL KYOTOではウクライナ避難民の受け入れ支援を行っており、空き部屋を利用してアナスタシアさんとサーシャさんのふたりを受け入れた経験がある。コロナ禍におけるホテルの空き部屋を何か世の中のために使えないか、とスタッフ全員で考えたところ、今回の避難民受け入れで意見が一致したという経緯を説明された。京都市からはホテルの部屋の提供だけでいいと言われていたが、その間の食事や日用品など、避難民の方々の生活が気になって仕方なかった片岡さんは、料理好きを活かして毎日3食食事を提供したという。片岡さんの作る料理はどれも全部おいしかった、とアナスタシアさんとサーシャさんは語った。
今回のお話の中で「今日のような質問は僕はできなかったから、今日初めて気づいたことが多かった」と感想を話す片岡さんが印象に残っている。というのも、ふたりを受け入れた当初は、避難してきたばかりだったため、直接的な話題は避けた方がいいと考えていたからだという。例えばサーシャさんは日本のアニメを好んでいるため、アニメ好きのホテルスタッフと共通の話題で会話を楽しんでいたようだ。
トークショーの最後に飯田が避難民のふたりに質問する。「僕たちに何を期待しますか?」すると予想外の答えが寄せられた。「今までもたくさん応援やサポートをしてくださって、私たちは感謝しています。だからそのままで十分です。そのままでいてください」あんなことをしてほしい、こんなことを希望している、という答えを想像していた筆者はとても衝撃を受けた。しかし、日本で安心して過ごせていることが分かり、嬉しい気持ちになった。
今回ナノボロが音楽イベントであることにも触れ、ウクライナの音楽についても話す場面があった。アナスタシアさんはウクライナのオススメのアーティストを聞かれ「KAZKA」と「SKAI」という2バンドを答えた。ぜひみなさんも一度聞いてみてはどうだろうか。
片岡さんは今回のトークショーの中で改めて平和について考え直し、ひとりひとりがひとつずつ、勇気を出してアクションを起こしていくことが大切である、と私たちに訴えかけた。行動できなかったとしても、行動しようという気持ちを持っている時点で動いてることと同じであるとも述べた。2日間の貴重でリアルな話を通して、私たちには何ができるかを今一度考え直してみる。まずは手の届く範囲から、少額でも募金するところから、など自分にできることを積み重ねていくことが、まず私たちがやるべきことだと感じた。
トーク終了後には昨日に続いてスイカ割りが行われ、周囲の声かけを頼りに目隠ししたアナスタシアさんが見事一発でスイカを割ってくれた。始めてのスイカ割り体験に笑顔が溢れるふたりが、これからもどうか安心して日本で過ごしていけるよう、心から祈るばかりである。
※今回ナノボロは、赤十字などに寄付をする考えもありますが、おふたりのようないちばん我々の近くにいる避難者の方に支援することに決めました。支援先は下記やホームページに記載していますので、是非皆様も寄付をお願いいたします。
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取組みを通じて集めた寄付金は下記へ寄付します。
「ウクライナ・キーウ(キエフ)京都市民ぐるみ受け入れ支援ネットワーク」
※京都市、(公財)京都市国際交流協会、京都キエフ交流の会の3者が事務局となり、避難民の方への支援を行う団体
<口座振込先>
京都市中央金庫 岡崎支店 普通 0198143
公益財団法人 京都市国際交流協会 理事長 千玄室
Photo by コマツトシオ
Text by 風希