佐野千明

ボロフェスタ2024
ボロフェスタ2024

巡る季節に

落ち始めた太陽に照らされて、木々も黄色に染まった16時。屋外のKBS食堂には、京都在住のシンガー、佐野千明が登場した。まずは「橋の途中」でリバーヴたっぷりのギターに乗せて、混じりけの無い純粋無垢な歌声が届けられる。フードの匂いや屋台の盛り上がりのなかで鳴らされるrengeとのデュオが、そっと喧騒の間をすり抜けながら祭りの空気に溶けていく。素朴な生活を延ばした先に存在する彼女の楽曲群はどこか浮ついた野外のムードを落ち着かせ、夕焼け小焼けのチャイムが鳴るあの瞬間のように、後ろ髪を引かれるセンチメンタルな一幕を形成した。

夏の暑さが尾を引く今日に添えられた「夏の影」では、時折冷たい風が頬を撫で、居座っていた夏が少しずつ消え去っていることを実感する。佐野は「晴れて良かったです」と心底嬉しそうに話していたが、本当に秋晴れの似合うステージだった。



Text by 横堀つばさ

Photo by 瀬藤育