雨で隠された涙
ここまでアッパーなアクトが続いてきたGREEN SIDE STAGE。セッションに導かれて姿を現した荒谷翔太がその一声を響かせた刹那、ここからはディープな時間になることを確信した。一度誘いに乗ったら戻れない遊戯のような底知れなさを漂わせる「caffè e llatte」、リフレインされる「すっぽんぽん」の跳ねる促音がチャキチャキと鳴るギターカッティングと絡み合う「すっぽんぽん」で、アダルトな手触りと共に幕が切り落とされる。荒谷の艶めかしい歌声で時折涼しい空気を感じられるようになったフロアでは、アルコールを煽りながら身体をゆだねるファンも多く、すっかり夢心地に。
青いライトに照らされた荒谷がおもむろに歌い始めて投下されたのは「涙」。ステージを照らす光が、明け方を想起させる白や、夜を彷彿とさせる藍へと、歌詞に呼応して移り変わり、大切な人に会えずぽっかりと心に空いた穴を浮かび上がらせる。そのまま静謐なキーボードと唸るチョーキングのギターを先頭にして「雨」へなだれ込む。水という共通点を媒介に今にも叫びたくなるような激情を表象したひとコマは、土砂降りの今日に染み渡っていった。
Text by 横堀つばさ
Photo by なかむらるか