ナノボロ2024 DAY2 ——夏は終わるが音楽は続く

ナノボロ2024
ナノボロ2024

また熱い夏が始まるようなステージ

2日目のnanoのトップバッターは京都の注目若手バンド、降之鳥。木村成(Ba)はナノボロスタッフも兼任する。
「京都のバンドとして、並々ならぬ思いです。興奮が冷めないです!」と、マイクを握りしめ、ストレートに喜びを語った河野圭吾(Vo)。雲を割り、光が降り注ぐようなエモーショナルな音像。
5人全員で轟音を放てば、これからまた夏が始まるのではないかと思うくらい熱いステージでナノボロ2日目が始まった。

考えるよりも感じて

降之鳥の熱そのままに、次に出てくるのは、ナノボロやボロフェスタに欠かせない存在であるオカムラヒロコ(Key)率いるTOKIMEKI☆JAMBOJAMBO。11月4日ボロフェスタ最終日に登場を予定している。
1曲目の「Nina」でベースが鳴らなくなるトラブルがあったが、笑いに変えつつ、客をハッピーなグルーヴで盛り上げた。「PARASUMMER CARNIVAL」では、窓のないライヴハウスに渚と照りつける太陽が見えた気がした。歌がないインストゥルメンタルながら、歌詞が聞こえてくるようなサウンドの抑揚に心が揺さぶられた。

出会ったことがすべて

喫茶マドラグでは、お客さんが美味しいご飯を食べながら、カーミタカアキ(Vo&Gt)の弾き語りが始まるのを待っていた。カーミは、「ゲストいいですか?」と、カーミも属するULTRA CUBでドラムの稲毛僚也をカホンでステージに呼んだ。稲毛と、息と目を合わせてのアウトロが素晴らしく、まっすぐな歌がマドラグに響いていた。
「ゲストをもう1人呼びます!」と、つい先ほどカーミの前に出番を終えたばかりの、ふるかわののこ(ザ・みゅ~)を呼び、「桃色オーバードライブ」を仲良く一緒に歌う場面も。
「ボロフェスタでなぜスタッフをやっているかというと、人と出会うのが好きで。昔は自分のことだけ歌っていた。色んな人と出会って変わった。出会ったことがすべてだと思う」と、ボロフェスタの理念にも通じる気持ちを語り、最後の曲「永遠集合」を熱唱した。

轟音で満腹!

昼下がりのおやつ時のnanoでは、とにかく大きな音でお腹一杯にしてくれるメシアと人人が登場!指弾きの優しいタッチからの激しいアウトロ、ノイジーなシューゲイザーへと、目まぐるしくサウンドが変化。轟音がnanoの床に壁に客に、叩きつけられた。ギターとドラムのみの構成でありながら、複雑な音像が紡ぎだされる。
ナツコ(Dr&Vo)は新作グッズの手ぬぐいを頭に巻き、パワフルなアクトで注目を集めた。北山敬将(Vo&Gt)がファズを踏んでからの暴れっぷりが特に凄まじく、ギターを搔きむしるように弾き、最後は床に投げつけてステージを去った。

ライヴだけじゃない!トークも必見!

2階の居酒屋□□□ん家では、バンヒロシ大学のトークイベントが開催された。京まちなか映画祭の理事長でもあるバンヒロシ。彼は京都の音楽の移り変わりを見届けてきた生き字引である。
そのバンヒロシが肌で体験した伝説のライヴの話を、味わい深いステレオスピーカーの音とともにお届け。
星野源の貴重な初めてのサインお披露目もあり、ナノボロはライヴだけではなくトークでも盛り上がっていた。

フロアは沸騰する洗濯機!

今年の<FUJI ROCK FESTIVAL>にて、深夜3時台のROOKIE A GO-GOを爆音でぶちかました天国注射がnanoに登場!モヒカンのインパクトだけではなく、確かな実力を持つ彼ら。池澤健(Vo&Gt)の絶叫とともに瞬間沸騰するフロア!
「ぎゅうぎゅう!」と池澤が叫ぶ。フロアでは客が汗だくになりながら、もっと音楽で暴れたいと、暴発寸前。「ぎゅうぎゅうでもっとぎゅうぎゅうしようぜ!!」と新曲へ。有馬於音(Dr)はタイトなドラムで煽り、山野敬晃(Ba)は重く激しくビートを刻む。池澤がフロアに降りるとモッシュが起き、フロアが洗濯機の中にいるかのように、もみくちゃになった。

スーパー・デラックス・ダンス・タイム!

フェス後半を折り返し、人が多くなってきたnanoでは、着実にファンを増やしているSuper Backが登場。
「スーパー・デラックス・ダンス・タイム!」と丹野貴博(Vo&Gt&Syn)が宣言すると、カウベルを叩き、「キテレツバイソン」に「JADA」と、踊れる曲を連打した。小椋貴仁(Dr)のフィジカルの強いビートには思わず体を揺らしてしまう。サポートベースの清水佑はクールにフロアを踊らせた。ステージから押し寄せるサウンドに刺激され、皆がミラーボールに照らされて自由に踊る、ナイスなダンスタイムだった。

日本語に火を付けろ、山田亮一とアフターソウル

関西では初お披露目となる山田亮一とアフターソウル。期待と興奮が渦巻くなか、フロアにいる全員が息を呑んでライヴが始まる瞬間を待った。

リハーサルでは「アパルトの中の恋人たち」を演奏。客はすでにライヴが始まったかのように、腕をセンターの山田亮一(Vo&Gt)に向けて高く掲げていた。本番では、1曲目に「ワンナイト・アルカホリック」。待ちに待った客の熱い気持ちがほとばしり、大合唱になり、喜怒哀楽のすべてが汗となり涙になる。「ネイキッドチャイニーズガール」では、ハヌマーン時代の曲も素晴らしかったが、4人演奏用にお色直しされたイントロが印象的であった。最後には「ハイカラさんが通る」。ジャパ(Ba)のプレイの安定感が際立つ。たなか(Gt)のソロギターには華があり、音だけでなく表情でも感情豊かに弾くギターが心に訴えかける。水野絢太(Dr)はパワフルかつテクニカルな圧巻のドラム。
山田亮一という強烈に輝くロック・スターに対して、メンバーも燦然と個性を放ち、30分間のステージで自前の霊魂を燃やす。山田亮一のビッグマフが、テレキャスターが、日本語ロックに再び火を付ける瞬間を二条nanoで目撃した。

最後はロックンロールでしょ!

ナノボロ2日目の最後を飾るのは171!「最後はロックンロールでしょ!」と、元気よく登場。「GO GO リトルカブ」で爆音のライヴがスタート。
モリモリ(Dr)が楽しそうに笑顔でビートを刻み、彼らのロックが炸裂する。激しいカッティングのギターを演奏しながら、田村晴信(Vo&Gt)は熱く歌った。
「俺たちのナノボロ!俺たちが171!ロックバンドですよろしく!!」と、キラーチューンの「インターセクション」をアクト!カナ(Ba)がファズを踏み込み、歪んでいくベース。田村とカナの掛け合いが混ざりあって共鳴していく。これぞロック・バンド、これぞロックンロール!というライヴで胸が熱くなった。
アンコールではリクエストに応じ、「インターセクション」のおかわりもあり、終始熱気に包まれた。
今年、東京でのワンマンも早々にソールドさせ、勢いがあるバンド、171。彼らは、ボロフェスタ初日の11月2日にも出演する。ぜひ、いまライヴを観てほしい。

記事で取り上げた演者の他にも、マドラグのトリを堂々と務めNo Funのバンドメンバーやファンに囲まれ大団円でライヴを終えた内田秋、照明が落とされ真っ暗なnanoで音楽のトランス状態に誘いフロアを焚きつけたMOFO、妥協せず自分たちがカッコ良いと思う音楽で観客の目と心を釘付けにしたNikoんなど他にも成長株のアーティストが続々と登場。これからの音楽シーンが楽しみになるような、ナノボロらしい充実のライヴだった。

台風10号接近のため開催が危ぶまれた今回のナノボロであったが、豪雨に見舞われることもなく無事2日間開催されチケットは両日とも完売。
演者もお客さんもスタッフも、観たかったバンドや、いつも観ているバンドの普段より気合の入ったステージを観て、ドリンク片手に笑顔で過ごすことができた。

ナノボロが終わると、夏が過ぎ去ることを惜しみつつも、季節は秋のボロフェスタ本祭へ。そして音楽は続く。

Text by 松下愛

Photo by コマツトシオ

Photo by サカモトツバサ

Photo by 定藤孝徳