11月のボロフェスタ本編に先駆けて、夏の終わりに〈ナノボロ〉が、8月20日(土)、21日(日)に開催される。2020年より新型コロナウイルス感染拡大予防のため、会場を京都KBSホールヘ移し、今年で3年目となるKBS版ナノボロは、いったいどんな年になるのだろうか。主催のひとりでLive House nano店長である土龍と、the McFaddinのヴォーカルRyosei yamada、WANG GUNG BANDのギター・ヴォーカル杉本周太(ネギ)による鼎談を実施した。
インタビュー・編集/梶原綾乃 撮影/コマツトシオ
キャンセルが相次ぐも、ピンチヒッターに救われた〈ナノボロフェスタ2021〉
——去年の〈ナノボロフェスタ2021〉は、緊急事態宣言下での開催でしたね。
土龍:去年の8月は、オリンピックが終わったあとで、感染者数が上がっていて……めちゃくちゃシビアな状況の中で、開催を選びましたね。1週間前に開催されていたフジロックでは、出演を辞退したり、キャンセルになってしまったミュージシャンも多くて。やっぱりナノボロでも、「今ライヴはできないから辞退」というパターンと、「メンバーが陽性になっちゃってキャンセル」というのが相次ぎました。

土龍(Live House nano)
Ryosei yamada(以下、Ryosei):the McFaddinは、去年出演できなかったんですよ。
土龍:そう。去年のナノボロフェスタは、the McFaddin含め、4、5組キャンセルになってるんよね。で、弾き語りで出演予定だった五味(岳久)君が急遽LOSTAGEとしてバンドで出てくれて、逆にbedはバンドではキャンセルになったけど、山口(将司)ひとりで出演してくれた。メシアと人人も参加してくれた。もう1組キャンセルが出たらさすがにやめるか、みたいな話になってんけど、なんとかやれるんやったらやりたいと思って。
杉本周太(以下、ネギ):WANG GUNG BANDは、急遽出演することになった側ですね。 踊る!ディスコ室町のピンチヒッターみたいな感じで、出演しました。
土龍:いろんなところに声をかけた結果、みんな参加してくれて、それってめちゃくちゃかっこいいやん。みんな出れへんかったのは残念な話だったと思うけど、みんなに助けてもらって、なんとか開催できたのはよかったと思います。
——踊る!ディスコ室町のキャンセルから、WANG GUNG BANDの出演がすぐに決まったことはよく覚えています。
ネギ:そうですね、声を掛けてくれてありがたかったです。みんなめっちゃ舞い上がってましたよ。
コロナ禍で、みんなライヴの楽しみ方がわかってきた気がする
——そんな状況からはや1年ですが、最近のライヴハウスの状況はどうですか?
土龍:突然遊びにやってくるお客さんがいたり、人が戻ってきた感じはある。他県のバンドからも、「イベントやるので」「アルバムのツアーをやるので」みたいな連絡はきていて。でも、お客さんの数がコロナ前に戻っているかっていうと、それはまだまだ戻っていない。ライヴハウスとかクラブに限らず、人が集まる場所に足を運べないって人も、まだまだいる。仕事の都合であったり、家族の都合もあったりするからなあ。
——おふたりは何か感じていることはありますか?

杉本周太(WANG GUNG BAND)
ネギ:ライヴ中、声は出せないわけだし、お客さんどうしの距離も保たないとあかんし、どう反応すればいいか戸惑っているお客さんも多かったですよね。でも今はお客さんも、自分がライヴハウスでどういう楽しみ方をしたらいいのか、ちょっと伝わりだしてきている気がします。「よかったら手を叩いて反応してくれたら」とか、一生懸命伝えていたし、自分らなりに工夫はしてたから。みんな、そういう反応の仕方に馴染んできて、ライヴに来やすくなったんじゃないかなと思います。
土龍:みんながこの時代に合わせた楽しみ方を、それぞれが見つけてくれ始めたみたいな感じかな。
Ryosei:僕らはそもそも、コロナ前はお客さんが全然入っていなかったんですよ。コロナ禍では、家に閉じこもって死ぬほど曲を作って。曲をめちゃくちゃ出して成長できたので、バンド的にすごいよくなって。お客さんの顔を見ていても、やっぱ楽しんでくれている人も増えたし、お客さんの数も帰ってきているなと思います。4月にリリースパーティーが実現できたのも、ひとつのいい着地点だったと思います。一方でコロナがなければ、もっとバンドとしてグーンと上に上がっていけたなって思うことも若干あるんですけど。
土龍:ライブの本数が減ってる間に、曲作りを着々と進めていったからこそ、今のクオリティと知名度の上がり方があるんじゃないかな。やめたバンドもほんとにたくさんいるよ、 現場からいなくなっちゃったミュージシャンとか、もうほんとたくさんいるし。もうそれに関しては「そうかしゃあないな、またな」ぐらいしか言われへん。
ネギ:ピンチヒッターとしてナノボロに出るまで、「音楽の場所が消えていくんかな」みたいなことはちらっと思ってたけど、これだけの人が集まって楽しんで帰ってくれるなら、音楽フェスはまだまだ続くやろな、っていうのはめっちゃ思いました。 「この時期があるから、これからよくなっていくはず」みたいな、可能性を感じました。
——ボロフェスタでは過去、「音楽を止めるな」という言葉を掲げていましたが、改めてそれが確認できたなと思いました。
ネギ:ライヴが始まる前までは、「コロナ禍だし、お客さん少なくても仕方ないかな」みたいに思ってたけど、終わったらメンバーみんな「いや、最高だった」「めっちゃ楽しかったな」ってなっていたから、お客さんからパワーをもらってるのは絶対あったな。

Ryosei yamada(the McFaddin)
Ryosei:僕は〈ボロフェスタ2021〉に出演したんですけど、めちゃくちゃ楽しかったですね。当時はKBSサイズのハコに出たことなかったし、初めて入ったんですよ。KBSで最初にステンドグラスを見た瞬間から、あれを開けることを目標にしようとメンバーと話をしたのを覚えてます。「いつか僕らの後ろで(ステンドグラス)開け」って思ってます。
——the McFaddinの曲で開くステンドグラス、楽しみです。では今年の〈ナノボロ2022〉、どういうライヴにしていきたいですか。
Ryosei:去年はナノボロに出演できなかったので、今年のテーマは「リベンジ」ですね。じつは、最初にナノボロに出たときにもでかいアクシデントが2つあって。まず、これはめったにない出来事だと思うんですけど、ベースのストラップがちぎれてしまって。
一同:(笑)
Ryosei:あと、VJが熱暴走っていうんですかね、演奏中に1回止まったんですよ。で、ステージの上にRyoma(Matsumoto) が走ってきて、「Ryosei、ちょっと待ってくれ」って言われたんです。ちゃんと聞いてたんですけど、ストラップがちぎれたことで1回演奏を止めていたから、これ以上止めたくなかったんです。だから、Ryoma を無視して演奏して。そのときのRyoma の姿、忘れられない(笑)。
——あはははは!
土龍:「Ryoseiお前、やるんかい!」みたいな(笑)。
Ryosei:でも今回のナノボロでも、どのライヴでも、やることはいつも通りです。お客さんたちがお金を払って来てくれて、楽しもうとしてることを理解してるから、僕たちは全力で100パーセントやるだけです。かなり練習しているので、よくなっていると思いますね。
土龍:the McFaddinがよくなっているのは、ライヴを観るたびに思うよね。メンバーで共同生活をしているから、一緒にいる時間も長いし、それも大きいよね。日常的にバンドの話とかもしてるし。
ネギ:それはいいことだなあ。
Ryosei:僕、他のバンドをやったことがないのでわからないんですけど、話を聞いてると、どうやら仲がいいらしくて。
——(笑)。
土龍:ずっと仲いいまんまやねん。
ネギ:めちゃめちゃ憧れますね。昔から僕が憧れているバンドはみんな仲がよくて、ファミリーな感じなものが多いんです。
——WANG GUNG BANDは最近どうですか?
ネギ:the McFaddinとWANG GUNG BANDは真逆で、みんなそれぞれほかの活動もしているから、全員が顔を合わす機会がほとんどないんですよね。そんな中で、出来上がってきている新曲がわりとよくて。
土龍:メンバー全員がミュージシャンとして、お互いのことをリスペクトしているよね。
ネギ:全員の置かれている状況が違うし、言ってしまえば向いている方向もちょっと違うんですけど、その中でも熱量のすり合わせ方みたいなのがわかってきていて。会ったらピタッと合わせられるし、ずれたらずれたところを直していこうと話し合いもしたりするし。そういうことを繰り返して、今までにはない感じの曲が出来上がってきています。別にナノボロのタイミングに合わせたわけじゃないですけど、バンドの新しい姿みたいなものを見せられるタイミングじゃないかな、と思っています。
土龍:いや、なんかすごいことになりそうやな、今年も。the McFaddinとWANG GUNG BANDは、どっちも地元を代表するバンド。「このバンドが出るから大丈夫」みたいな、そういう枠でブッキングしているんよね。地元のバンドがいてこそ、京都のイベントとしての見え方が変わるでしょ。2組とも、今年はすごいライヴを見せてくれそうな気がする。
今年はどんなライヴになる?注目すべき出演者の一部を紹介
——楽しみですね。ほかにも、気になる出演者はいますか?
ネギ:僕はどすこいSTAGEのメンツがすごい楽しみです。こんな人出るんや、って思って。この前、幽体コミュニケーションズのライヴを見たんですけど、かなり仕上がっていて。今年のロビーは、どんなライヴになるんやろ。
土龍:実は今年、「ロビーのステージはやめとこうか」みたいな話もあったんよ。ロビーはやっぱり人がたくさんいてこそで、お客さんの数が少ないのは、なかなかハードルがあって。っていう話になっていたんやけど……でも今年もいいブッキングができたし、状況的にもお客さん来てくれそうだし、「やっぱやろうや」ってなって。
Ryosei:僕らと同じ20日に出演する、Pee.J Andersonも気になりますね。僕、大好きなんです。
ネギ:21日だと、UlulUも本当に好きで。もうサブスクがすり切れるくらい聴いています。
土龍:UlulUはめっちゃオールドスクールなロックをしていて、渋いギターソロもあって。曲と詩がめちゃくちゃいいよね。Pee.J Andersonの曲はちょっとオーガニックなジャズのテイストがあって、素晴らしいユニットで。
Ryosei:2年前のナノボロでストラップがちぎれたときに、代わりを貸してくれたのは愛はズ(愛はズボーン)でしたね。2マンも呼ばしてもらったし、僕らも呼んでもらったんですけど。演奏キレキレですね。
ネギ:あの赤犬とHYPER GALをナノボロで見れるのもアツいですね。いろんな会場で観ようと思ったら観れたんですけど、「いや、まだだな」って、ナノボロのために溜めてたんで(笑)。楽しみです。
——2組のライヴはもちろん、ほかのラインナップも非常に楽しみですね。ありがとうございました!
一同:ありがとうございました。
〈ナノボロ2022〉
8月20日(土)~21日(日)京都KBSホール
[チケット]
■一般発売
1日券 前売 ¥3,800 / 当日 ¥4,300
2日通し券 ¥7,200(※前売のみ)
※すべてドリンクチャージ別
e+(イープラス)にて販売中
※金額はすべて税込です。
※1券種につき、1ドリンク代(500円)が別途かかります。通し券は、ご来場初日のみ1ドリンク代が別途かかります。
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