PEDROとして示した意地と光
ボロフェスタ2024のラストは、再びボロフェスタに戻ってきたアユニ・D(Vo&Ba)のバンド・プロジェクト、PEDROに託された。MC土龍の「ボロフェスタはロック・フェスティバルです! 最後に登場するのはもちろん、めちゃくちゃ格好いいロック・バンドです! 」という紹介のあと、アユニは真剣な眼差しで入場した。
「人」そして「祝祭」で、フロアを右に左に見渡しながら体を揺らし、手を上げ、天を仰ぎ、シャウトをし、体をくねらせながらベースを掻き鳴らす。汗だくになって、無我夢中で表現する彼女の姿からは、このバンドで生きるという覚悟が感じられる。「吸って、吐いて」では、連続する迫真の演奏を目の当たりにしたお客さんから自然と手拍子が起こった。やってきたことは正しかったし、やりたい音楽、見せたい景色がしっかりと伝わっている。そして、一瞬も見逃がすまいと感覚を研ぎ澄ます私たち。ふと彼女の表情を見て、「がむしゃらな人間の姿はなんて美しいのだろうか」と泣きそうになってしまった。
アユニがボロフェスタに初出演したのは8年前。その8年後の今、「音楽って究極に思うがままにやっていいんだと思った記憶は、今でも自分の宝になっている。音楽と人を好きになるきっかけとなったフェスに、時を経て大人になって、PEDROとして戻ってくることができて嬉しい」とMCで当時を振り返りながら、アユニは丁寧に感謝を述べた。現在のPEDROが、ボロフェスタ2024の大トリを任された意味やこれまでの関係性を感じずにはいられない。
最新シングル『意地』から「hope」を披露し、サポートの田渕ひさ子(Gt)や、ゆーまお(Dr)と何度も目を合わせる姿からは、互いの信頼も垣間見えた。そして、集中を切らすことなく最後までPEDROの現在地を示して駆け抜けた本編を「アンチ生活」で締めくくった。
巻き起こるアンコールの呼びかけに応え、最後に演奏したのは「雪の街」。アウトロのまたとないタイミングでカーテンが開き、本日初めてのステンドグラスが姿を見せる。あどけない少女から格好いい大人になり、夢を叶えた彼女をキラキラと彩った。
今後も音楽を背負う覚悟と、積み上げてきた確かな自信が終始にじみ出ていた魂のステージ。元の肩書きなど関係ない。現在のPEDROとしての覚悟を示した50分間だった。最後の音が鳴り止むまですべてを出しきる彼女に対し、フロアからは最大限の賛辞が送られていた。ボロフェスタの歴史にも、私たちの記憶にも深く刻まれた夜は、熱狂と感動のなかで、こうして幕を閉じた。
Text by キムラアカネ
Photo by 昴(shohnophoto)