Le Makeup

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Photo by瀬藤 育
Text by梶原 綾乃

冷めやらぬ、興奮の熱

ソングライター/プロデューサー/DJのLe Makeup。
国内外のダンスミュージック・シーンで活躍している彼が、
ナノボロフェスタへ登場するのは驚きだ。
昨年6月に発売されたアルバム『微熱』は、すでに名盤との声も。

ステージには、Le Makeupこと井入啓介と、サポートで入ったハラスの2人が立つ。
ゆったりしたTシャツとパンツ、サンダルという姿で、
ぎらぎらとした目線でこちらを見つめる彼の存在感に早くも圧倒された。

「Le Makeup、よろしくお願いいたします」とひとこと、「Beginnings」が始まる。
憂いを帯びた歌声に、ブレイクビーツな終盤でぐっと盛り上がる。
「明日」では途中でサウンドトラブルがあったものの、その浮遊感のある楽曲に
ホール全体の多くの観客が夢中になっていた。

「Sit Down in Reflection」では中盤から彼自身がギターを鳴らし始め、サウンドの厚みがぐっと立体的に進化した。そして、もはや新しいアンセムと言ってもおかしくはない「微熱」も、会場にセンセーショナルに響いた。時折、うつむいたり、後ろを向いたりと、どこか落ち着かない様子にも見えた彼なのだが、それは余裕の証拠なのかもしれない。その楽曲も歌唱もスキがないし、すべて緻密に計算しつくされているように感じる。

フランク・オーシャンやダニエル・シーザーを彷彿とさせるような、センチメンタルで力強い楽曲を持ち味としている彼の音楽。そのセンスのよさはライヴでも健在だったし、その不思議な魅力に虜になった観客は多かったように思う。
正直なところ、彼にとっては少しアウェーな環境かもしれなかったが、さまざまな音楽が鳴らされるボロフェスタのなかに、くっきりと爪痕を残していったなとも感じている。