LOSTAGE

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Text byshohnophoto

ロックバンドとしての証明と意地。

「音楽が聴きたいのは今なんですよ」

音楽は生活の中に付随するものであり、ひとの心に届いた音や言葉が、そのひとの救いとなり、
ライヴハウスやフェスに行こうという動機になるのだ。
もし「音楽」がなければ心の拠り所をどこに向ければよいのだろうか?
そう思っていた僕らを救ってくれたのは、五味岳久(Ba.Vo)の言葉だった。
それは、会場にいたすべての人に対するラブレターのようにも感じた。

奈良を拠点に活動する3ピースロックバンド「LOSTAGE」が、ORANGE SIDE STAGEのトリとして登場。
もともとは五味の単独出演の予定だったが、「LOSTAGE」として急遽出演を快諾してくれた。

この日の彼らはナノボロフェスタへの感謝と、ロックバンドであることの証明を感じさせるライヴとなった。

初めの「ひとり」では、グランジ・ロックを感じさせる3人の息合った轟音が炸裂。
KBSホールが小さいキャパシティのライヴハウスかと思うぐらいの音量なのだ。
特に、岩城智和(Dr)のサウンドはニルヴァーナのデイブ・グロールを彷彿とさせるパワフルなサウンドだ。それでいて全くブレがない。

良いバンドには絶対的なドラマーがいるわけだが、岩城のドラムはLOSTAGEのピースになくてはならないものであると序盤で気づかされた。

すでにこの時点で彼らは会場を制圧していた。

冒頭、“やさしすぎてなにも言えなかったかい”という歌詞から始まる「こぼれ落ちたもの」。
そして3曲目の「窓」へとライヴは展開されていく。
ここでは先ほどのグランジ・ロックからエモーショナル・ロックへと変貌を遂げ、
五味拓人(Gt)のギターサウンドが曲の世界観を彩っていく。

中盤に差し掛かってきたところで「ポケットの中で」が披露される。
人生には苦境に立たされるときや、辛い瞬間が必ずやってくるわけだが、
この曲ではそんな五味の葛藤が描かれているように思える。
そんな彼の言葉に思わず没入してしまう一曲であった。

あっという間のライヴは残すところ3曲。
「MY FAVORITE BLUE」では、サビの部分で高々に歌い上げる五味が印象的だった。
「surrender」ではハードコアに表情を変えるギターサウンドが僕らの感情を揺さぶる。

「いやー楽しかったです。楽しかったです(笑)」
「僕が聴きたかった音楽が聴けた、やれたと思います。ありがとう」

他にはないブッキングでリスナーを楽しませるナノボロフェスタと、発起人である土龍への感謝と愛が五味の口から伝えられ、最後は「手紙」でライブを締めくくった。

隣のGREEN SIDE STAGEで行われていたLimited Express (has gone?)のライブに触発されたと五味はMCで言っていた通り、LOSTAGEのライヴは魂溢れる熱いショーだった。
ライヴ後に完全燃焼した五味が、ベースアンプに寄りかかる姿がそれを物語っていた。

経験値と総合力で圧倒した彼らだったが、改めて急遽出演を快諾してくれたLOSTAGE。

本当に、ありがとう。