山口将司(bed)

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Photo byshohnophoto
Text by梶原 綾乃

それぞれが背負っているものとか

昼過ぎのどすこいSTAGEに現れたのは、bedの山口将司。
新型コロナの影響で、急遽バンドとしての出演がキャンセルになり、彼一人での出演となった。
この日のセットリストは、バンドで演奏する予定だった楽曲だという。

「何が今、正解とか、正しいとか、わからないですけど」と、
戸惑いの気持ちを見せつつも、祈るように「No Idea」を演奏した。

「言葉よりも曲を」ということで、感情の行き先を探すように、「通り過ぎたばかり」。
アコースティックの乾いたタッチが、ステージに静かに響き渡る。
そして、bedのもうひとりのヴォーカル、ジューシー山本がメインを務める曲「100万周年」も、今日は山口ひとりで披露した。
バンドメンバー全員の気持ちを背負い、力を振り絞って歌い上げた。

ここでさらに山口が口を開いた。バンドで出れなくなってしまったり、出ないという決断をした演者について。今日、来てくれたお客さんと、それこそ遊びに来たくても断念したお客さんのことなど。さまざまな思いを募らせ、それぞれが選択を迫られている世の中もよくないし、みんながなんとなくジレンマを抱えている状況であるということ。

演者も観客もそれぞれの想いを背負って、今ここに立っている……そんなことを再度認識させられる。みんなの想いを寄せてできあがった今日というステージに、特別な感謝を捧げたいと思った。最後に鳴らされた「シンク」は、この世の中の状況が終わるよう願いを込めた、エンドロールソングのようにも聴こえた。