「不幸せの中の幸せ」を歌うNaNoMoRaLが魅せた希望
「後藤まりこ アコースティックviolence POP」からバトンを引き継ぎ、どすこいステージに登場したのは、2018年3月9日(ミクの日)に雨宮未来のソロユニットとして結成された、雨宮未来(Vo)と梶原パセリちゃん(Vo,Ma,Pr)の男女2人組アイドルユニット「NaNoMoRaL」だ。ソロなのにユニットかつ、アイドルなのに男女という特異な編成でアイドル界隈で異彩を放っており、活動当初はアイドルイベントへの出演がほとんどだったが、現在ではバンドライヴへの出演も多く、2019年には「ボロフェスタ 2019」に出演していた。
MC土龍に呼び込まれ、サビの疾走感が痛快なパワーチューン「ビューティフルデイズ」でエネルギッシュにスタートを切る。一曲で会場の緊迫感を蹴散らし、連帯感とバイブスがぶち上がる。最高の幕開けだ!
続く「サーチライト」では、エレクトロニックで弾けるような曲調と独特な声質の2人が織りなすハーモニーが、会場中を彩るように響く。また、Aメロ・Bメロではサイレントでも力強く、コール時の手振りをしたり、サビでは思い切り良く拳を突き上げたりと、筆者を含むファンがいかにNaNoMoRaLの音楽を渇望していたのかが窺える熱気だった。
そして、ライヴのキラー・チューン「唖然呆然」のイントロが流れてくると、筆者も自然と体が揺れた。“所詮僕の見たワンダーランド”と現実を揶揄する歌詞も、伝えたいことは最後の1行“幸せで死にそうだ”に集約されるだろう。そんな最終的に希望を強く抱けるパセリちゃんの歌詞世界が好きだ。また、雨宮の笑顔があまりにも無垢で美しく、見る者の心をときめかせていた。
続けて新曲「ペオプレ」を披露し、5曲目「嘘つきかくれんぼっち」へ。これは雨宮がアイドルグループ「エモクルスコップ」を脱退した後、エモクル時代に楽曲提供をしていたパセリちゃんが手掛けた初の雨宮のソロ曲だ。2人が「東京のお父さん」と呼ぶ吉田豪のリクエストにより、最近アレンジを加え、ようやくNaNoMoRaLの楽曲になった。打ち込みとは思えない味わい深いギターリフが哀愁を感じさせるトラックの上に乗り、雨宮のいなたい歌い方とパセリちゃんのソウルフルな歌声が、幸せなグルーヴを生んでいた。
「今日は出会えて嬉しかったです」と伝え、最後の曲「さよならデスペ」へ。イントロの電子音が心を躍らせ、加速するビートにテンションが振り切れていく。熱くて近い空気感から自然と観客の腕が上がり、どすこいステージがこの日1番の盛り上がりを見せた。
雨宮が「また京都に戻って来れるように頑張ります!」と決意を口にしてライヴを締めた。来年さらに大きくなったNaNoMoRaLをより大きなステージで観たいと思わせる、圧巻のライヴだった。