巡る季節の先にある光
「街の底から駆けあがっていきましょう」。こんな大黒崚吾(Vo&Gt)の一言で口火を切った鉄風東京にとって初めてのボロフェスタ。切り込んでいくイントロのベースとがっしりしたビートが火花を散らす「Dazzling!!」「遥か鳥は大空を征く」をぶっ放し、「これが鉄風東京だ」と早速名乗りを上げる。
「金木犀の匂いを香らせます」の宣言からドロップされた「金木星」と「東北の雪の歌」と紹介された「Remember my snow?」の季節の歌2曲を連ねるひとコマでは、比喩表現をたっぷりと用いた抒情詩が、それぞれの季節を引き連れながらじんわりとフロアへ浸透していく。今回は披露されなかった「スプリング」も含め、鉄風東京の季節の歌が出揃ってきた事実に、彼らの軌跡を想像せずにはいられない。
そして、そんな軌跡を描いたのが続く「Not end,now I run.」だった。能登半島地震に伴うトークセッションに触れたうえで「音楽は身体に必要なくても心には必要。かすかに感じた光を逃さないように。終わらない歌を」と告げてドロップされた同ナンバーは、まばゆい光や記憶を追い求めるひとつのバンドの姿を綴っている。楽曲のクライマックスで加速する直前、正面を真っ直ぐ見つめた大黒の眼は間違いなく未来を捉えていた。
Text by 横堀つばさ
Photo by 加藤はな