Saucy Dog

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

いつも隣にあってほしい

ボロフェスタ3日目もいよいよ中盤。夕暮れ時のORANGE SIDE STAGEに現れたのはSaucy Dogだ。
聴き手に寄り添い、景色さえ思い起こさせる立体感のある歌詞で、恋や別れの切なさを歌った共感性の高い楽曲で人気を得ている3人組だ。
昨年のボロフェスタにも出演予定だった彼らだが、開催中止を受けて今年、念願の出演が叶った。

1曲目“煙”の歌い出し、石原慎也(Gt,Vo)が息を吸った瞬間から、ステージと観客との距離がグッと近づいた気がした。その体温が間近で感じられるような歌声、空間を満たす柔らかなサウンドがそう感じさせるのだろう。日曜日の夕方に見る、暖かな夕日のように、私たちに寄り添ってくれる。

4曲目では最新ミニ・アルバム『レイジーサンデー』から“シンデレラボーイ”が披露された。この曲は、思わず泣きたくなるようなラブ・ソングだ。この曲は終盤に向かって石原の感情がマックスになり、ダイナミックな大団円を迎える。さきほどとは雰囲気がガラリと変わり、それまで手を挙げたり手拍子をしていたお客さんも静かになり、その世界観に浸っていた。

石原が遠回りしてもいいんじゃないか、と想いを込めた“東京”では、上京を経て感じた葛藤や希望が切実に、丁寧に歌い上げられた。この曲で描写されているように、誰もが感じる悲しみや苦しみを音にして、代弁するかのように歌い上げてくれる。いつも隣にあってほしい、そんな音楽を鳴らし続けるSaucy Dogの活動に、今後も目が離せない。

Text by ヒワタシサキ
Photo by 関 ゆかり