笑って泣いて踊って。生命力にあふれるステージング
ソウル・フラワー・ユニオン(以後、SFU)のライヴ前、BiSのステージが終わった後すぐのことだ。
ボロフェスタ代表の飯田と箱を持ったスタッフが登壇。「ちょっと聞いてください」とお客さんに向けて説明をはじめた。
どうやら箱の中にあるものは、宮城県女川町のかまぼこ店「蒲鉾本舗 高政」の社長・高橋正樹さんが送ってくれた笹かまだという。
高橋さんは2011年の大震災の際、自身のターンテーブルがどこかに流されてしまったそうだ。
そのターンテーブルを偶然SFUの中川敬(Vo,G)がTwitterで写真付きで投稿したのだ。
SFUの大ファンだった高橋さんはたまたまタイムラインから流れてきたその投稿に「僕のです!」とすぐ反応。
その縁あって中川はその年のボロフェスタに彼を呼び交流がはじまったという。
(そのとき高橋さんはBiSとの衝撃的な出会いをする。その話は前のステージのBiSの話も合わせて読んでほしい。)
奇跡的に出会えた高橋さんから、ボロフェスタ20周年を祝して笹かまを送ってくださったことを知った観客は、大きな拍手を送ったのだった。
そう説明している横で観客と楽しみながら音チェックをしていたSFU。
中川は「なんでこんなおじさんが呼ばれたのか分からないよな〜」と観客にやいのやいの言いながらも、演奏が始まると豹変。
“グラウンド・ゼロ”では重厚な音で会場を縦乗りに、“この地上を愛で埋めろ”では奥野真哉(Key)の鳴らす陽気なテンポが心地良さを与えた。
28年のキャリアの振れ幅の広さに驚かされ、なんておもしろいバンドだと思っていたら、定番曲“満月の夕”を演奏してくれた。
これは、1995年の阪神淡路大震災が起きたあとに作られた曲だ。この鎮魂歌に私は泣かされた。笹かまの話もあったので余計に。
号泣したあと、演奏してくれた“ダンスは抵抗”ではタイトルとはうってかわって観客は琉球民謡のメロディに合わせ踊り狂う。
隣にいて“満月の夕”で一緒に号泣していたマダムはいつの間にか隣にはおらず、躍り狂っていた。
笑って泣いて踊ってのこの空間は不思議だ。なんだかターンテーブルの奇跡も、このバンドが起こした巡り合わせなのではないだろうかと思えた素敵な時間だった。
ちなみにライヴ後、Twitterでかまぼこをもらったお客さんたちが『高政さん粋な計らいをありがとうございます』といった文言と共に笹かまの写真を載せてくれている。
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Photo by shohnophoto
Text by けんてい