心に突き刺さる、魂のリリック。
今年で20周年を迎えたボロフェスタ2021も、ついに最終日。残る出演アーティストも、あと5組となった。多くのアーティストが情熱を燃やしてきたこの会場に姿を現したのはTHA BLUE HERBだ。
BOSS THE MCがマイクを握ると空気が変わるのがわかった。リリックに込められた熱い想いがまっすぐに心に突き刺さり、フレーズのひとつひとつが体内に浸透して熱を持って蓄積していく。「まだやり残したことがあるんだ(“AND AGAIN”)」。痛烈な叫びは、観客の心に寄り添い勇気づける。ボロフェスタ全体が、このTHA BLUE HERBの熱いステージを心待ちにしていた。
“AME NIMO MAKEZ”では、情熱的なラップに会場は日常を忘れ、身体を揺らしたり踊ったりして彼らの音楽に心酔しているようだった。彼らのライブの圧倒的な熱量に衝撃を受け、ただステージを見つめ立ち尽くす人も見られた。THA BLUE HERBの言葉のひとつひとつを、きっと忘れることはできないだろう。
ライブ中、BOSS THE MCは「コロナなんかじゃ離さない」と言った。私たちのようなファンのことも、ライヴという機会も、手放すつもりはないという彼の根底の部分を感じることができた気がした。音楽に向き合う機会を失い続け、やっとボロフェスタでTHA BLUE HERBに出会えた、今日。その言葉を聴けたことを心から嬉しく思った。彼は曲中で「いつかやりたいこと、今やらないとやらない」と観客に叫んだ。環境や境遇に嘆くよりも、彼らのように情熱を持って後悔を残さない生き方をしようというメッセージが、身体が震えるほどの熱量で投げかけられる。重みのある言葉と沈黙を味方につけ訴える彼に胸を打たれ、背中を押された人が何人もいると確信できるステージだった。彼らの想いを受け、この先も音楽と向き合うことを諦めないと改めて思った。またボロフェスタで、彼らの音楽に触れたい。
Photo by shohnophoto
Text by ヒワタシ サキ