Have a Nice Day!

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

Have a Nice Day!が魅せたユートピア

15時のORANGE SIDE STAGEにHave a Nice Day!(以下、ハバナイ)の浅見北斗(Vo)が登場すると、MC土龍とのお約束「シンガロングは絶対にマスクを外すなよ。外したら浅見をスタッフ全員でボコすからな」に従って、観客は上に跳ねたり、準備体操、靴を脱ぎ出す。ハバナイのライヴは、彼らのジャンルに囚われないサウンドに観客が踊り狂うのが特徴だ。浅見の「Have a Nice Day!はじめます」の掛け声を合図に“ファウスト”が始まる。

「君はファウスト/悪魔たちと踊っている」……ハバナイといえば、の引きの強いメロディ・ラインをぐっと胸に抱え、マスク越しに許された小さなシンガ・ロングを口パクでする。直接聴こえてきたわけではないが、きっとこの瞬間、皆が歌っていたと思う。会場のルールと決められたスペースを守った上で歌い踊り狂うお客さんの姿は、まさに悪魔たちが踊っているようであった。

赤いスポットライトに照らされてはじまる“LOCK DOWN”、続く“僕らの時代”の流れに意図があったかは分からないが、宣言後に発令された、東京アラートによる赤色にライトアップされたレインボーブリッジを思い出した。不要な外出を控えるよう言われて、生活に不要だと言われたライヴに行くことを憚られたあのときから現在、自分の意思でライヴに来て踊ることができている。ライヴ・ハウスを出れば、まだ制限のある世界。せめてハバナイの見せるステージは、ユートピアだと思って踊り狂っていたい。そう考えると後の“ビューティフルライフ”、“Night Rainbow”は、曲のなかだけでも、素晴らしい景色を味わわせたいというハバナイの気概を感じた。
とくに“Night Rainbow”は、サポート・メンバーによるコーラス、強靭なリズム運びと、曲のきらめきが浅見の歌声にかっちりとハマっていて、とても眩しかった。チャンシマ脱退後、現体制初のボロフェスタで、今の彼らを象徴するようなプレイだったと思う。

ラストに披露した“LOVE SUPREME”まで踊り狂う観客に、キレッキレのアジテーションで応えるHave a Nice Day!。決まりのなかで行われたステージにも関わらず、彼らと観客のパーティがより素晴らしいものに更新されたのは間違いなかった。彼らとまたライヴ・ハウスでシンガロングできることを夢見る。

Photo by コマツトシオ

Text by けんてい