ZAZEN BOYS

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

20周年のMATSURIには、極上の祭囃子を

昼過ぎのORANGE SIDE STAGEに登場したのは、ZAZEN BOYS。ボロフェスタにはもう何度も出演している彼らが、20周年のお祝いに駆けつけてくれた。次第に観客が増えていくフロアで、サウンドチェックと称し“Honnoji”を披露すると、フロアも彼らも十分に温まっていることが確認でき、準備はばっちりだ。

「MATSURI STUDIOからMKタクシーを10台連ねてやって参りました、ZAZEN BOYS!」とお決まりの口上も京都仕様でお送りすると、“Cold Beat”。先程の熱量とは裏腹に、MIYA(Ba)の音は確かできわめて確かで冷静に鳴らされているし、吉兼聡(Gt)も淡々としている。かといえば、松下敦(Dr)のゴロゴロと転がっていくような勢いあるソロ。思わず拍手が上がる。リハからトーンダウンというよりは、しっかり頂点に向けて突き上げる準備をしているのだろうとうかがえる。

おなじみ“HIMITSU GIRL’S TOP SECRET”では、最初から爆音。イントロの1音1音が耳を直撃してくる。動き回るベースのフレーズが、まるでギターのようにメロディとなり、メイン・フレーズを力強く支える。中盤はメンバー全員がリズムを声でとるという、アカペラのような状態になるが、観客もそれに応えるように拍手を送り、観客とZAZEN BOYSによるセッションが繰り広げられていた。

「MATSURI STUDIOからMKタクシーを1人1台ずつ使ってやって参りました、ZAZEN BOYS!」と、ふたたびのセリフに詳細なアレンジが加わると、週末にふさわしいファンク・ナンバー“Weekend”に、クラフトワークのカヴァー“Computer Love”と立て続けに披露。リズム隊の作る湿気のこもった音像は、本家と同じ熱を帯びていてワクワクした。それでいて、向井秀徳(Vo,Gt)の歌い口や、メロディから感じる哀愁はやっぱりMATSURI STUDIO産と行った感じで、その豪華なコラボレーションに酔いしれた。

ポテトサラダやしじみ汁への素直な欲求を歌った“ポテトサラダ”では、観客に指差し唸るように歌う向井と、腕を大きく挙げて「ハイハイ!」と合いの手を入れる向井のギャップがたまらなく可笑しくてかっこいい。“はあとぶれいく”でのマイクスタンドを次第に下げていき、中腰で歌う向井の姿に、かつての授業終わりを思い出した人もいるとか、いないとか(本人曰く「授業が終わって起立!っていうあの感じ」だとのこと)。

極めつけは、ラスト“半透明少女関係”。 この曲は随分前からプレイされずにきた曲だったのだが、今年のライヴで再び披露されるようになった。あのソリッドなイントロが鳴らされたとき、観客が大きく喜んでいるのがはっきりとわかった。祭囃子を彷彿とさせるフレーズには、喜びをぶつけるように体を揺らしていた。封印された期間が長かったぶん、この祭りはボロフェスタのお祝いとしても特別な意味を持っていたと思う。コール&レスポンスも魅力のこの曲、実際に行うのは世の中的に難しくなってしまったが、そんなのが気にならないくらい、会場はひとつになっていた。最後の最後、向井の「わっしょいわっしょい」という絶唱は、向井なりのボロフェスタへの祝辞だったに違いない。

20周年の祭りにふさわしい祭囃子を届けてくれたZAZEN BOYS。この日は、彼らのかっこよさも面白さもぎゅっと詰まった、特別なライヴとなった。

Photo by リン

Text by 梶原 綾乃