台風クラブ

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

野暮ったくてちょうど良くて、カッコいい。

ステージ上では、MC土龍(party navigator)による「瓦割り」のオープニングセレモニーが行われ、2周目の、そして5日目のボロフェスタがスタートした。
いちばん最初に爆音を轟かせたのは、ボロフェスタには2016年から5回目の出演となる、地元京都の3人組、台風クラブだ。

石塚淳(Vo,Gt)がふらっと登場し、SGのギターを掛け、ライヴは “火の玉ロック”から。山本啓太(Ba)と伊奈昌宏(Dr)によるリズム隊は、ただ技術的に達者なだけでなく、少しネジを緩めたような特有のタイム感が野暮ったくてちょうど良くて、カッコいい。

「日本語ロックの西日」と自ら称するバンドの郷愁漂う佇まいと雰囲気は、観る者の幸福で温かな記憶を呼び起こし、落涙を誘う。ささやかでも幸せな記憶があるから、今の自分が穏やかでいられる、と思った。MCでは、「KBSに学祭みたいな空気が充満していて最高」と語るなど、2年ぶりのボロフェスタを誰より楽しむ気持ちが伝わってきた。

ライヴは、 “なななのか”から “下宿屋ゆうれい”へ。さまざまなジャンルや要素が有機的に混じり合い、演出する、ポップな京都のムードがご機嫌で楽しい。独特なガレージ・サウンドがたまらない。

「この日の帰り道のテーマソングやります!帰るまで覚えててくれ!」と言い、最後は、 “まつりのあと”。ギターがドラムとベースと一緒にドライヴしていく。台風の如く渦を巻いて鳴らされる3人のグルーヴは、とても狂おしい。でも、たわいのない日常に通う温度を感じられる。

彼らのライヴの間、ホールには「ただ落ち着くなぁ。なんかいいな」という空気があった。そんな時間は大切だ。

Photo by 関 ゆかり

Text by 石上 温大