大人になるということ
ズンと沈むような低い音と、巨大なドラム音。ニシオカケンタロウ(Ba)、桝本カズキ(Dr)の挨拶がわりと言わんばかりの先制パンチが観客に飛んできた。“天王寺減衰曲線”でスタートしたPK shampooのセットリスト。特定の誰かを歌っているわけではないが、歌詞に触れる観客たちはどこか懐かしんでいるようにも見える。歌詞こそノスタルジックに感じるも、アップテンポなこの曲に、会場はついてこれるのだろうか。ライヴは勢いよくはじまった。
特に印象に残ったのは、“奇跡”だ。振り切られまいと拳を立てる観客に、ヤマトパンクス(Vo)は語りかけるように詞を届ける。「まるで僕ら奇跡だ わかりあう為に買った缶ビール飲み干して」というフレーズに、多くの観客が自分の気持ちを伝えるように拳を高く突き出す。この曲は一緒に酒を飲み明かした仲間への歌なのかなと捉えた。徐々に大人になり、学生のときの馬鹿騒ぎも、気付いたらゴミ袋の上で寝ていた醜態も、二日酔いのなか朝4時に見た、鴨川の河川敷での朝焼けも、時間と共に周りの人間は大人になり、それぞれの道を進む。あの時間を思い出すとき、(あのときは若かったよな)と言う君はただの過去の思い出として扱うようになっているんだろう。
「君よ、統計学上の人にならないで」に込められたヤマトパンクスの詞に、私たちは気づけているだろうか。
Photo by 関 ゆかり
Text by けんてい