MOROHA

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

MOROHAvsボロフェスタの勝敗

ボロフェスタ2週目の大トリを任されたのはMOROHAだ。長年ボロフェスタとのプロレスを挑み闘ってきたMOROHA。彼の人間らしい想いのこもった魂の吐き出しには、ボロフェスタに来た観客、運営ともども心を奪われてきた。

アフロ(MC)は「運営側に『LIQUIDROOMを満パンにしないとボロフェスタに出さない』と言われていた。だからSOLDOUTにしました。さらには武道館でやることも決まりました」と話した。続けて「正直に言うね。運営ザマアみろこの野郎!!」と今回の出演に対し、達成や感謝の念、20周年への祝福など様々な想いを込めたシャウトを放つ。MOROHAとボロフェスタのガチンコ勝負のゴングが鳴った瞬間だ。

はじめに歌った“ストロンガー”では、本来のリリックに加え「ボロフェスタに来ているみんなさ、行こうぜ明るい未来へ胸を張ってさあ!!」と叫ぶ。はじめこそ横揺れだったフロアも、鎮座するUK(Gt)の詳かに弦を弾く音がアフロのリリックを加速させ、フロアに鋭く突き刺していく。“革命”での「乾杯!!」でフロアに拳を立たせ、何者かになりたくていろんなものを捨ててきた人間の想いが表出した“俺のがヤバイ”と、MOROHAの攻撃は止まらない。

さまざまな想いを乗せた曲をやってきたMOROHAだが、後半に披露した“主題歌”の6分間がいちばん会場を沸かせたと思う。この曲は昨年コロナ禍のなか宅録で制作され、リスナーは自分の好きな価格で購入する、いわゆる投げ銭スタイルでリリースされたことが話題となった。MOROHAの曲のなかでも、屈従、忠誠、迷い、悟り、反発を全部ぶち込んだ一曲であり、曲を売るアーティストと買うリスナーとの関係値をあらわすことで、価値を再確認させた一曲でもある。幾度となく発令される緊急事態宣言、不安で明日の見えない日々は本当に辛かった。この日々をアフロは、会場にいた人に語りかけるように、ひとりの人間として自身が体験した辛かった日々をリリックに乗せた。「目の前には真っ暗闇の未来が広がった なぁこんな時 一体どうすればいい?」、「マスクの中でずっとラップしてた」からは、人間が共通に味わった辛さを代弁するのではなく、アフロ自身の想いを述べていたと思うし、「不要不急?不撓不屈だよ 馬鹿野郎」のリリックには感情が爆発しそうになり、マスク越しからでも叫びたかった。歌詞の一言一句に感情を揺れ動かされる。それはボロフェスタ運営もそうなのではないだろうか。
ボロフェスタは今年で20周年。その道のりは決して平坦なものではなかった。右も左も分からず始めた頃から、かなり大きな規模で行えるようになった今でも、毎年毎年大きな壁があらわれ、開催できるかどうか悩まされてきた。それでも今回20周年を迎えられたのは決して運営の独りよがりなものではなく、出演してくれたアーティストたち、最高なものを創ろうとするボランティアスタッフたち、何よりもボロフェスタを楽しみに来てくれたボロフェスタ・ラバーたちのおかげだろう。ボロフェスタの大事な場面で出演してくれたMOROHAが歌うからこそ「なくなった 遠い街のライブハウスを思う」の部分に涙を流さずにはいられなかった。

ステージのカーテンが開き、ステンドグラスがきらめくと、最後の曲、“勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ”へ。スモーク越しにアフロの息づかいが見える。「勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちをこだわるよ」と歌う彼らを見ていると、ボロフェスタにずっとプロレスをしてきたMOROHAなりのレゾンデートルなのではないだろうか。アフロは「京都ボロフェスタありがとうございました」と観客に向けて叫ぶと、50分間の闘いに大きな拍手が贈られた。

この闘いの勝敗は?筆者にはジャッジできない。アフロもMCで「俺も意見が変わることはあって矛盾することがある。けどそれは2つの正解があると思う」と話していた。どっちが勝ちでも負けでも良いと思う。だから何度でも、何度でもMOROHAとは闘い続けていたい。そして常にボロフェスタという舞台(ライバル)に挑戦してきてほしい。

Photo by リン

Text by けんてい