OGRE YOU ASSHOLE

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

あの時間は、現実だったはずだ

自分の身体と音との境界線が無くなるが、なんとか喰らいつこうとする。40分の演奏中で現実と夢の間を何度行き来しただろうか。ORGE YOU ASSHOLEのライヴを終えた後の感想だ。こう感じたのはおそらく自分だけではないはず。

ボロフェスタ開催前にMC土龍は彼らをこう紹介していた。『ボロの周年には欠かせない最強の音楽集団。このでかい音は一体どこから鳴ってるんだ?ってわからなくなるほど彼らの音で空間が満たされるんです。絶対に観てほしい』
その発言通り、リハのときからでかい音が会場に充満していた。たまらず身体を横に揺らす観客。横揺れする準備はできていそうだ。

満を持して演奏開始、一曲目の“他人の夢”では出戸学(Gt,Vo)のリバーヴの効いた声と、清水隆史(Ba)のズシンと響くベースがでかい音で攻めてきた。サイケデリックであり前衛的な音楽を目の当たりにした観客たちは、曲のピッチが上がるほど速く揺れ、音が強くなるほど激しく揺れるようになった。驚いたのはだんだんと音全体にリバーヴがかかるようになり、スピードがダウンしたとき、それに合わせて揺れもゆっくりになっていったことだ。観客は完全に身体を乗っ取られたのだ。

乗っ取られたと思えば、勝浦隆嗣(Dr)のドラムのスピードの機微に気づくことができたり、“見えないルール”での馬淵啓(Gt)のソロギターで感情が動かされたりと、自分の体の動きと自我が別々であることに気づくので、ここは現実だ。夢の中ではなかった、と感じたのだった。
夢かと思えば現実だという錯覚が最後まで繰り返される、不思議な時間。きっとあの時間は……現実だったはずだ。それくらい観客全員が圧倒されてしまったのだ。

Photo by リン
Text by けんてい