BiSH

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

BiSHにとってのボロフェスタ

ボロフェスタ2021、計6日の開催も今日で5日目。この日のチケットは完売しており、多くのファン(以後、清掃員)が会場に出入りしていた。筆者が会場についた頃には満員御礼の状態。2015年のボロフェスタから連続出演しているBiSHは、20周年記念で発売されている「BOROFESTA 20th Anniversary ZINE」に「愛すべき音楽と出会えるトコロ。音の命を感じる場所で、一緒に成長させてもらったBiSH 幸せモンです。」と嬉しいコメントを寄せている。

舞台袖でのリハーサルを終えたメンバーが遂にステージに登場。会場の盛り上がりを味方に“しゃ!!は!!ぬあ!!あぁ。死!!いてぇ。”でスタート。この曲は、メンバーがラジオで「ライヴで1曲目をやるなら」と選ぶ曲である。深紅の衣装に身を包むのはアイナ・ジ・エンド。アイナのパートに赤いペンライトを振る清掃員を見ていると、同じ空間にアイドルがいることの重要さを感じる。本来なら賛否の分かれる推しジャン(推しへのジャンプアピール)も、事前のMC土龍の説明「モッシュとかはダメだけど、区切り線の中で応援するのはOKだから!」を守っており、人は多いなかでも距離を保てていたのではないだろうか。
その後に“オーケストラ”、“BiSH-星が瞬く夜に-”が続く。数々の人気曲に、前方だけでなく後方のお客さんたちもノリノリだ。

MCに入るとセントチヒロ・チッチが挨拶し、ボロフェスタ20周年への祝福と、そんな大切な場面でトリを務めることができた感謝を述べた。ハシヤスメ・アツコによる「会場のみんなも楽しんで行こうぜー!!」の声ではじまった“GiANT KILLERS”。冒頭の歌詞「皆さま 良しなに」を「ボロフェス! ボロフェス!」に変えての祝福に、会場もスタッフも笑顔になった。
BiSHの振り付けはキャッチーなものが多く、ペアで行うものが多い印象だ。これぞパンクと言える“DEADMAN”ではギターをかき鳴らすリンリン、“I have no idea.”ではモモコグミカンパニーとリンリンのダンスに割り込むハシヤスメ、“スーパーヒーローミュージック”でアユニ・Dを背負うチッチ……などメンバーのコミカルな動きに会場は釘付けになったのではないだろうか。“MORE THAN LiKE”で、メンバーに合わせて観客全体が腕を横にゆっくりと揺らす光景は、BiSHのステージだから成せる観客とのコミュニケーション方法だろう。

ここまでノンストップで歌って踊る彼女たちと、それについていく清掃員の熱量で、会場に湯気が発生する。MCで思わず「スモークじゃなくてリアル湯気じゃん。BiSH、驚いています」と少し話した後、“スパーク”のイントロが始まる。メンバーが「花いちもんめ」のような振りをする場面では、当時から応援していた清掃員やスタッフたちは、我が子の成長を見守る親のような気持ちで見ていることだろう。このあとの“beautifulさ”ではトゲトゲダンスを会場全体で行う。今日はじめてBiSHを知ったであろうお客さんも一緒になって踊る光景は、音楽フェスならではのものだろう。

終盤にかかり、チッチは「自分がひよっこの頃からボロフェスタにはお世話になっています。これからもいつも通りのBiSHを見てください」と話した。全国ツアーにホール公演満員と、トップアイドルの道を着実に進んでいるBiSH。走り疲れたり寄り道だってしたくなることもあるだろう。これからもボロフェスタは「いつでも帰ってこれる場所」としてあり続けることができたら、と思う。“STAR”のクライマックス、カーテンの開帳と共にステンドグラスの光が彼女たちを照らすが、彼女たちの輝きはステンドグラスにも負けない。ここにいる全ての人や出来事に愛を届けるように“ALL YOU NEED IS LOVE”を歌い切った。

会場から大きな拍手が送られたアンコールで、本当の最後に披露した曲は、デビュー・アルバムから“サラバかな”。いつもボロフェスタで披露してくれる1曲だが、ここでデビュー当時の曲を披露するということは、ボロフェスタでお客さんと過ごしてきた時間を大切にしてきた、彼女たちのボロフェスタ愛から来ているのかもしれない。古よりBiSHを知る人も、新しくBiSHを知った人も全てを楽しませた時間だった。毎年出演するたびに、進化してくる彼女たち。きっと次回は今日以上の輝きを見せるはずだ。

終演後、最後尾にいたハシヤスメが、ステンドグラスを(これすごくない!?)と言いたげに指をさして去っていった。凛として去っていくのではなく、ちょっとおどけた様子でステージを降りるその姿は、ボロフェスタに実家のような安心感を覚えてくれている証拠だと感じた。これからもここKBSホールへ帰ってきてほしいし、成長を見せにきてほしい。

Photo by コマツトシオ
Text by けんてい