BiS

ボロフェスタ2021
ボロフェスタ2021

瞬間の命を生きる彼女たちはカッコいい。すばらしい瞬間がいくらでもある。

Saucy Dogからバトンを引き継ぎ、ORANGEステージに登場したのは、BiSだ。
ボロフェスタには2011年から5回出演しているが、メンバーは3度変わっているため、彼女たちは令和BiSと呼ばれている。ボロフェスタとBiSの歴史のなかでも、2013年にソウル・フラワー・ユニオンのステージで実現した奇跡のコラボ「ソウルフラワーBiS階段」によるライヴは、ステージ上からパンティやタンポン、笹かまなどが投げられたり、隣のステージにスタッフが上がり音楽に合わせてなすがままに踊り騒いだりと、その年のボロフェスタのテーマ「カオス」を象徴するようなライヴとして深く刻まれている。

2つのステージ間にある紅白幕で囲われた舞台に立つフレディ・モーグリーをピンスポが照らし、“We Will Rock You”に合わせておなじみの足踏みと拍手でリズムを刻み出す。それは徐々にお客さんのあいだにも広がっていき、会場が温まったところで、客席後方の空からミラーボール(くす玉)がゆっくり落下してきて、近くにいた男性が紐を引くと「KBS武道館ビス」と揮毫されたロール紙が垂れた。アーティスト愛溢れる演出でBiSのライヴがスタートした。

ライヴは、“LET’S GO どうも”でエネルギッシュにスタート。いきなり研究員の腕が前後左右、または顔の前で弧を描くように動き回り、会場の連帯感とボルテージがぶち上がる。“STUPiD”で、組体操を完璧にキメ、“COLD CAKE”へ。イトー・ムセンシティ部の艶ある歌声が広大なKBSホール中に響き、ネオ・トゥリーズの圧倒的な歌唱力に驚愕した。

その音楽性や王道アイドルとのギャップでもって、幅広い層のお客さんを確実に研究員にしていく。アイドルとしての魅力だけでなく、先鋭的なロック・マインドに溢れた楽曲や、汗臭くもエモーショナルなパフォーマンスなど、いろいろな強みがあるBiSだからこそさまざまな人を楽しませることができるのだろう。

“つよがりさん”から“BiS-どうやらゾンビのおでまし-”へ。ポップで踊れて泣ける楽曲たちが怒涛のように押し寄せてきた。強く伸びやかに歌うチャントモンキーが、BiSのエモーショナルな楽曲をより強靱なものにしていたように感じた。トギーの豊かな動きと表情はいつ見ても元気をもらえる。京都出身である彼女の凱旋に華を添えようと、赤いオリジナルTシャツを着た研究員たちが大勢いたのも印象的だった。

最後は、「愛がほしい」と、メッセージをストレートに伝えるアッパー・チューン“LOVE”。暑苦しいくらいにパワフルに、感情を爆発させて歌う。また、4人一丸となってハートを作る振り付けが素敵だった。

彼女たちの言葉や音楽、パフォーマンスはいつも私たちに衝撃と勇気と感動をもたらし、その姿にはカッコよさとともにダークネスも感じる。でも、「えぐみ」のある、BiSが好きだし、彼女たちはギラギラと輝いている。その姿に無茶苦茶な説得力がある。

BiSを観る人には、BiSに答えを求めるのではなく、BiSに向き合ってみてほしいと思った。旧BiSと新BiSが、かつてのアイドル像を殺し、カッコいいBiSを確立した延長線上に、令和BiSがいて、大勢の人たちの希望となっている。あの時も、あの場所も、あの人も、すべてが今のBiSに繋がっている。どんな経験を経て、今ここにいるのか。BiSはプロセスにこそ意味があると思う。

グループの伝統を受け継ぎながら進化を続けるBiSは、これからもボロフェスタとともに。

ライヴを終え、次は2013年の縁深いソウル・フラワー・ユニオンにバトンタッチだ。
また、驚いたことに、2013年のボロフェスタでのあのライヴにて、ステージから投げられた笹かまの製造・販売を行う、宮城県女川町のかまぼこ店「蒲鉾本舗 高政」の社長・高橋正樹さんから、この日のライヴのために高政のかまぼこが200個届いたという。彼は「ボロフェスタ2011」のトークショーに出演したことがあり、その際に目撃したBiSと研究員が作り出す愛と狂気に衝撃を受け、「おながわ秋刀魚収穫祭2012」にBiSを熱烈オファーするなど、ボロフェスタとBiSとに縁が深い。
高政のかまぼこは、ソウル・フラワー・ユニオンのライヴ後にロビーにて配られる予定だ。

Text by 石上 温大
Photo by コマツトシオ