匿名性が記名性へと羽化する
FRONT STAGEの最終走者、in the blue shirtへ直接バトンを手渡すのは、AiR NiKArだ。時刻は2時45分。水の弾ける音が聴こえると、客席は幻想的なカラーへ染まった。
キャップやターバンで顔を隠した5人は、それぞれゲームの登場人物を彷彿とさせる衣装に身を包んでおり、否が応でも目を引く。ステージ中央に陣取るドラムの正面にはバツ印のライトが設置されており、彼らの匿名性のアイコンとしての機能を果たしている。さらに、ステージもほとんど見えないほどに焚かれたスモークもその外見の曖昧さに拍車をかけていく。彼らのプロフィールの情報量は決して多いわけではないが、むしろその少なさが逆転的にAiR NiKArの幹となる情報なのかもしれないと思わされた。
生ドラムとパッドのミックスから綴られるビートは、ここまでの強烈なローサウンドとも純真なロックバンドの音像とも異なるサウンドスケープを描き出す。エスニックで踊れる1曲からドラムンベースの血統を感じるラウドなナンバーまで、METROを揺らした30分だった。
Text by 横堀つばさ
Photo by なかむらるか