ゆったりと夢の中へ
近所から歌いにまいりましたと、ふらっとどすこいステージに現れたのは、京都在住、弾き語りを中心に、バンド形態でもライヴ活動を展開するシンガー・ソング・ライター、いちやなぎ。
思わず目を閉じてしまうような優しい声に、それを際立たせる最小限のギター。私たちの生活に寄り添ってくれるような音楽がステージに響き、メインホールに入る人、出てきた人も思わず足を止める。腰を掛けてゆったり聴く人たちが多くいるなか、いちやなぎは「寝ながら聴くのでもいいですよ」と私たちに語りかけた。
ボロフェスタも後半、遊び疲れた人たちが休憩に集う。休憩にしては贅沢すぎるこの空間では、体育座りで頭が徐々に沈んでいく人もちらほら見え始めた。それだけ彼の奏でる音色は心地よい。私も思わず彼の歌声に目を閉じてしまった。
“本当のことを聞かせてよ 疑うことなんてしやしないから”と。「ゆめみごこち」のこのフレーズが、日常の疲れをいやしにボロフェスタにやってきた私たちの心にしみわたる。
彼のライヴは、車窓から物語を覗いているような、そんな感覚になった。
Photo by shohnophoto
text by ユウ