周辺住民(連名)

ボロフェスタ2024
ボロフェスタ2024

心にふっと温かく溶け込むハーモニー

ボロフェスタ1日目の昼下がり。外はあいにく雨が降りしきる喧騒のなか、どすこいステージに上がったのは小倉聖(Vo&Gt)による歌と楽器のソロ・プロジェクト周辺住民の合奏編成、周辺住民(連名)だ。このボロフェスタ2024が6名編成での初披露の場となる。

日常の細かな情景や感情の機微が丁寧に落とし込まれた音楽は、耳に入ってくる音全てが心地よい。合奏編成であることによって、アコースティック・ギターを含めたギター3本、ベース、ドラム、ピアノの音がより繊細に折り重なってハーモニーを生み出している。「たとえ荒天でも、船出になりますように」と小倉が言葉を残し、最後に演奏された「あまねく春へ」では、何重にも力強く重なり合って奏でられた音が、どこか牧歌的で懐かしい気持ちにもさせる。

「凄くいいじゃないか」「これを見るためだけに来た」「もう一回観たいね」そんな声が、余韻の残るフロアのあちこちから聞こえてきたのが印象的だった。何でもない日常で、ふと帰り道に空を眺めながら聴いて歩きたい。そっと心に温かく寄り添ってくれる音楽だった。

Text by 木村あかね

Photo by Riku kawahara