何もなくてもよい、背中を押してくれるのは彼らの音楽
ナノボロ2022もいよいよ終盤へ突入。盛り上がりも最高潮の中、ORANGE SIDE STAGEに登場したのは(夜と)SAMPO。2019年結成、2020年8月に初ライブにしてワンマンライブ、2021年eo Music Try 20/21のグランプリ受賞と、結成当初からしっかりと足跡を残し続けている彼ら。メンバーは、なかのいくみ(Vo)、吉野エクスプロージョン(Gt)、加藤秋人(Ba)、寺岡純二(Dr)、清水昂太朗(Key)の5人で構成されており、全員が会社員であるという。
「(夜と)SAMPO始めます」といういくみの挨拶によって、ステージは一瞬にして物語の舞台へと変わる。1曲1曲始まるたび、まるでその曲の物語の主人公が憑依したかのようにすぐに顔つきや仕草が変わっていくいくみ。時には恋する乙女のように、時にはいたずらな子猫のように、時にはあどけない子どものように。ステージ中を駆け回って、ワンピースの裾を躍らせて歌う彼女の姿はいきいきとしていて本当に美しかった。
このように彼女が自由に蝶のように舞えるのは、吉野、加藤、寺岡、清水の4人の存在があるからである。彼らのライヴを見ればすぐにそうであると強く確信することができる。のびのびと羽を伸ばすように楽しそうにパフォーマンスする4人はいつだって笑顔で、いつだって全力だ。安心して背中を任せられるとはまさにこのことである、と心からそう思った。
「我々の多くが京都の大学生を経てまして…」とMC中に話すいくみは、ナノボロに出演することができた嬉しさを噛みしめている様子だった。吉野は「吉野エクスプロージョン」という名前の名づけ親がボロフェスタ主宰のひとり、土龍であることを明かし、「今日も絶対(土龍さんに)届いていると思う。これからエクスプロージョンします!」とラストの曲へ向かう。「何もなくてもよいよってことを歌いたい」と強いメッセージを込めて“はだかの世界”を私たちへ届けてくれた。今日ナノボロで(夜と)SAMPOに出会えた私たちは、これから訪れるかもしれない寂しいひとりの夜もきっと乗り越えていけるだろう。
Photo by コマツトシオ
Text by 風希