ウクライナ避難民の方の現状と自分たちに出来ること①

ナノボロ2022
ナノボロ2022

今日本にいる私たちが考えるべきことは何か?

「ウクライナ避難民の方の現状と自分たちにできること」と題したトークイベント企画。ウクライナの現状を知り我々にできることを考えようという信念のもと、チャリティーの寄付企画も兼ねて実現した。ゲストには、ウクライナから京都市に避難してきたオクサナ・リホタさんとユリヤ・ボンダレンコさんをお迎えし、ボロフェスタ主宰の飯田仁一郎との対談形式で進められた。

きっかけは、ボロフェスタのスタッフ内で、「キーウと京都市は姉妹都市だからこそ、ボロフェスタで、ナノボロで、何かできないか? 」という呼びかけがあったこと。しかし、「現地への人道支援を考えている」という旨を京都国際交流協会に相談してみると、「日本人の考える、平和はこうあるべきだ! 今すぐ戦争はやめるべきだ! という姿勢も理解できる。しかし、当事者の方からすると、侵略されている現状を受け入れることにもなる」という趣旨の返答が。自分たちが言っているNO WARは、侵略されている方からしたらそんなに簡単な話ではないのだろう、ということを感じた。

そこで今回は、京都に避難されてきた避難民の方々に焦点を当てるトークイベントを行うことになった。おふたりに許可を得た上で、直球な質問をさせていただいた。その一部を紹介する。

飯田:
ロシアから侵略が始まった時どう思いましたか?

オクサナさん:
1月頃からニュースを見て、ウクライナを出なければならないとわかっていた。2月に戦争が始まったときは信じられなかった。初めは、友達や母は「何も起こってないよ〜大丈夫だよ」と楽観視していたが、現在は母はアメリカに避難、友達はハリコフにいたり西ウクライナやオーストラリアへ引越した。友達や家族と次にいつ会えるのかはわからない。

ユリヤさん:
戦争が始まる前日はひどい気持ちだった。たぶん明日はロシアが侵攻してくるかもしれないと言われていた。そして当日、夫に、ロシアが攻めてきて今すぐに逃げなければならない!と言われた。戦争が始まる4ヶ月前に結婚し、現在旦那は兵士としてウクライナにいて離れ離れ。今自分は安全なところにいるけれど、夫のことを思うと難しい問題だ。だからこそ支援したい気持ちでいる。逃げる途中、誰も戦争について話せなかった。食糧や水の確保など、皆家族のために必死だった。けたたましい音のサイレンが戦争を感じさせたし、避難先ではいつも泣いていた。
また、ブチャの悲劇では、400人以上が殺された。ロシアの兵士たちは、手を縛って沢山の子供たちや人を襲った。どうして子どもたちが亡くならなければならないのか? 何も感じなくなってしまった。今は日本に避難しており普通の生活のようにしているけれど、今もまだ戦争は終わっていないから、「私は何のために生きているのか? 」を考えることがある。

「日本にきてどうか? 」という問いに対して、「日本に来る前、ドイツに避難していたときは悪夢にうなされた。夜中に戦争の夢を見て大声で叫んだり。日本にきた時、自分の心に平和が戻ったと感じた。日本では安心して眠ることができるようになった。そして、京都は伝統的な日本の趣があるし、素晴らしい自然があるし近代的な部分もあり、心の声を聞くためにとてもよいところで、気に入った」というユリヤさんの話が印象的だった。どうして普通に生活することが許されないのか? 今私たちはどれだけ安全で平和な生活を送っているのか? 自分だけではどうにもならない問題に直面した時に初めて、人間は、己の力が達しない無力さと、これまでの生活がどれほど恵まれたモノだったのかを実感するのかもしれない。国家同士の争いに民間人を争う戦争という手段が、どれだけ非情で惨いことなのかを改めて感じさせられた。

飯田:
日本の人に言いたいことや求めることは?

ユリヤさん:
ウクライナのことを忘れないで下さい。ウクライナで起きた戦争はウクライナだけの問題ではなく、世界中の問題です。

そう、これは単にウクライナだけの問題ではないのだ。戦争勃発当初は日本でも再三報道されていたが、戦争が思った以上に長引いてしまっている現在、以前と比べてウクライナの現状を知る機会は少なくなってきているように感じる。日本人は平和ボケしていると言われることも多いが、しっかりと他者に、世界に目を向けることが今こそ大事であろう。

「この戦争はどうなると今思いますか? 」という問いに対しては、「もうすぐに終わりたい。しかし、ウクライナの軍隊は勇気を持っていて正義を持っているから勝ちましょう。いつか戦争は終わるはず、光は必ず差すはず」という力強い返答が。こちらが希望と勇気を貰った気がした。

そして対談終了後にはゲリラ企画としてスイカ割りが始まり、オクサナさんが目隠しをして見事綺麗にスイカを割ってくれた。日本での初めてのスイカ割り体験だったことだろう。多くのギャラリーに見守られ、日本での楽しい記憶になってくれていたらと願うばかりだ。

※今回ナノボロは、赤十字などに寄付をする考えもありますが、おふたりのようないちばん我々の近くにいる避難者の方に支援することに決めました。支援先は下記やホームページに記載していますので、是非皆様も寄付をお願いいたします。

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取組みを通じて集めた寄付金は下記へ寄付します。
「ウクライナ・キーウ(キエフ)京都市民ぐるみ受け入れ支援ネットワーク」
※京都市、(公財)京都市国際交流協会、京都キエフ交流の会の3者が事務局となり、避難民の方への支援を行う団体
<口座振込先>
京都市中央金庫 岡崎支店 普通 0198143
公益財団法人 京都市国際交流協会 理事長 千玄室

Photo by 瀬藤育

Text by キムラアカネ