ULTRA CUB

ナノボロ2022
ナノボロ2022

ULTRA CUBよ、永遠なれ

GREEN SIDE STAGEのトリを飾るのは、ナノボロのホストバンドを務めるULTRA CUB。音出しから全力を出して演奏する彼らのステージを、今か今かと期待して待つフロアはたくさんの人でいっぱいになっていた。そわそわしながら待つ人、音出しの時から拳をあげて楽しむ人、マスクをしていても笑顔なんだなとわかるお客さんたちを目の前にしてメンバーたちも更に熱くなっていく。ジングルと共に暗転した瞬間、その場にいた全員が息をのんだ。

「この瞬間は永遠、ULTRA CUBのロックの歴史の1ページに刻みます」とカーミタカアキ(Vo,Gt)が声を挙げて、1曲目“絶対”。今年からソーシャルディスタンスを保つための足元の目印がなくなったナノボロの会場。しかしながら、お客さん同士それぞれ間隔を保ちながら見るというコロナ禍でのライブの風景は変わらず続いている。昔の景色に思いを馳せ、人と人との物理的な距離を離さなければならないことに少し寂しさを感じつつも、全身全霊でロックを叫ぶULTRA CUBのおかげで、私たちひとりひとりの心の距離は以前よりも近くなっていく。ひとりじゃないという安心感で胸がいっぱいになった。

何度かのメンバー・チェンジを経て、2022年6月より現体制として活動を始めた彼ら。3年半ぶりにメンバー全員が正規メンバーとなった熱量を抱えて、それぞれが全身を大きく激しく使ってステージを作り上げる姿に心打たれる。鋭いまなざし、汗を気にせずガムシャラに叫ぶ姿、それぞれがライヴを心から楽しんでいてメンバー全員の熱い気持ちが音に乗って真っ直ぐ痛いくらいに伝わってくる。もはや攻撃である。それを必死に迎え撃つように、お客さんたちもまただんだんと熱くなっていった。

“夜煌船”では今までとは少し雰囲気が変わり、激しさを優しさや柔らかさへと変えて、ULTRA CUBの日本語ロックの美しさを歌う。ゆったりと厚みがあってなんでも受け止めてくれそうなメロディに合わせて、メンバーの顔もいままでより柔らかさが増していった。

そしていよいよULTRA CUBはラストへ向かう。最後に「最高です」と一言残したカーミは幸せそうに口角をあげた。それにつられるかのように、気が付けばホール全体が笑顔でいっぱいになっている。最後の曲はULTRA CUBの代表曲“愛を呼ぶ愛してる愛を叫んでるケモノ”。最後にふさわしく1音目から大きな音を鳴らすメンバーの熱気を受けて、お客さんも揃って1音目から強く拳をあげた。いや、拳をあげたというよりも、ULTRA CUBの熱さが自然とお客さんたちの拳をあげてしまった、という表現の方が正しいのかもしれない。ホストバンドとして会場を燃やし続けた彼らを称えるように、曲終盤、KBSホールのステンドグラスの幕が開かれる。青臭くて汗と照明でキラキラと輝くULTRA CUBと、透き通ったガラスに光を反射させて輝くステンドグラス。似ているようで正反対、けれどもどちらも美しく輝いている。最高のGREEN SIDE STAGEの締めくくりとなった。

今日この瞬間をいつまでも忘れないでいたい。

Photo by shohnophoto

Text by 風希