メシアと人人

ナノボロ2022
ナノボロ2022

嘘のない、そのままであることの美しさ

ステージでの感触を確かめるように、ひとつひとつ不安をつぶしていくかのように、音出しを入念に行って準備万端の様子。GREEN SIDE STAGEには今すぐにでもライヴがしたい!と言わんばかりの溢れだした気持ちが止まらないふたり、メシアと人人がスタンバイしている。その気持ちは止まらずに北山敬将(Gt,Vo)はジングルを待たずしてライヴを始めようとしてしまうほど。北山のはやる気持ちがどんどんフロアにも広がっていき、お客さんたちもまたメシアと人人のステージを落ち着きのない空気の中待ちわびた。

北山のギターと歌、福田夏子(Dr,Vo)のドラムと歌。文字だけ見ればシンプルな構成であるにも関わらず、ステージ上に居るのは本当に2人だけなのか?と混乱してしまうほどの音圧で殴られてしまう。しかし目に入るのはふたりとギターとドラムだけ。暑苦しいけど爽快感があって、ありのまま演奏を続ける姿が心から愛おしい。嘘がなくて飾らなくて…そんな2人のパワフルなパフォーマンスは見ている人全員の耳も目も心も全てを埋め尽くしていった。

今回のナノボロでは、まかない丼のカレーにも関わっているという北山。MC中「外で売っているカレー、僕がレシピを考えたので食べてください」とお客さんに向けて声をかける。お客さんたちはもちろん、長丁場のナノボロを走り続けるスタッフもみんな、今回このカレーに助けられてきたのではないだろうか。するとカレーの話をした時と同じテンションで「あと、12年ぶりにアルバムを作りました。それだけです」と突然のお知らせ。それ以上は何も語らなかったが、結成して12年を迎える彼らのファースト・フル・アルバムのリリース。彼らにとって今がとても大切な節目なのだということは、新曲を披露した2人の姿勢からすぐにわかった。

「バンドをやってる僕の心綺麗だろ」と汗だくになりながら叫ぶ北山は、間違いなく、そのフロアの中でいちばんのヒーローだった。それに負けないくらいにドラムを打ち鳴らす福田の音も全員の胸に突き刺さって抜けなくなっていた。最後、北山が持っていたギターをフロアに投げてステージは終了する。メシアと人人という生き様が輝いたGREEN SIDE STAGEとなった。

Photo by コマツトシオ

Text by 風希