ありったけの幸せに包まれて、ナノボロは大団円へ
昨日から2日間、京都の夏を盛り上げ続けたナノボロ2022もついに最後のステージ。最高の音楽たちを1日中浴びてはしゃぎすぎたせいで、少し重たくなった体をGREEN SIDE STAGEへと運ぶ。そんな我々をそこで待ってくれていたのは、京都生まれの7人組、WANG GUNG BANDだった。1曲目“SUNDAY”が弾むような口笛と共に始まっていくと、途端に夏休みが終わるのを心から惜しんだ小学生の時の気持ちが流れ込んでくる。終わらないでナノボロ!という寂しさと、ついにWANG GUNG BANDを目にすることができるという期待感で、フロアはいつになく落ち着かない空気で満たされていた。
7人で活動を行う彼らのステージでの様子や楽曲の節々からは、常に仲のよさが溢れだしている。そのおかげで聴いている私たちまでもWANG GUNG BANDの一員であるかのような気持ちにさせてくれ、ライヴを見るたびにその温かさに包まれていく。今回のステージもいつも通りの優しさで彼らの音楽が紡がれていった。
杉本周太(Gt,Vo)が「ジブリの世界の中にひたって聞いてください」と一言、“風を追いかけて”の演奏が始まると、どこか懐かしくて誰もが1度は見たことがあるような情景が頭に浮かんでくる。あの瞬間はきっとその場に居た全員が同じ景色を想像し、同じ気持ちに浸っていたはずだ。幼い頃、全てのものに対してキラキラと目を輝かせていた純粋な気持ちを思い出し、自由にステージを満喫するお客さんたちでいっぱいのフロアは心から幸せだなと思える景色であった。
続いて「夏が終わるまでに悔いなく楽しんだ方がいいんじゃない?」と始まったのが、2022年8月17日にリリースされたばかりの新曲”バイバイサマー”。照明も、どこか夏の夕方と夜の境目の空のような色に変わっていき彼らを照らした。最後の最後まで夏を楽しんでほしい、というメンバーの思いが届いたのか、最後のギターソロでKBSホールのステンドグラスの幕が開かれていく。それを振り返りながら嬉しそうに目を見開くメンバーの姿が忘れられない。
ステンドグラスを背に「これよりももっと綺麗な夏、まだまだ過ごせるから、みんなも自由に生きてください」と杉本がお客さんたちへと投げかける。最後に“KITTO”を披露し、ナノボロも終わろうとしていた。しかし曲が終わっても鳴りやまない手拍子。少し照れ臭そうにステージへと戻ってきた彼らは9月からの2マンツアーの告知をし、ツアータイトルにもなっている“素敵な相棒”をアンコールとして選曲。最後の最後まで私たちを楽しませてくれたWANG GUNG BAND、しかし彼らが誰よりもいちばん楽しんでいた。そんな彼らと彼らの優しさを受け取った私たち全員の手によって、ナノボロ2022はこれ以上ない幸せと共に無事に大団円を迎えることとなる。
いまだ不安や緊張が続く世の中であるが、こんなに尊い時間が今日も守られたことを誇りに思った。私たちの居場所はいつまでも私たちの居場所としてあり続けてほしい、と心から願う。
Photo by コマツトシオ
Text by 風希