Text by 村尾ひかり
Photo by リン
ボロフェスタの過去のライヴから、印象に残ったライヴをブログスタッフが個人的にセレクトしてご紹介するLIVE REPORTS ARCHIVE。
今回はボロフェスタ2019の3日目から、Homecomings Chamber Setを紹介します。
セレクト担当より
前年のボロフェスタ2018でのライヴを観て一瞬にして心を奪われたHomecomings。
3日間の大トリを飾った昨年は、
ストリングスを加えた8人編成でのステージでした。
繊細なアルペジオの音色とともにゆっくりとステンドグラスが開かれていく
その感動的な美しさは今も忘れられません。(村尾)
ボロフェスタ2019のラストを美しく飾った Homecomings Chamber Set
ボロフェスタ2019もいよいよ最終アクトとなった。18年目のボロフェスタで大トリを務めるのは京都のバンド、Homecomingsだ。
今回はストリングス4名を加えたHomecomings Chamber Setとしての出演である。
ライヴが始まる前から会場は興奮と期待に満ちた異様な空気に包まれ、彼らの登場を待ちわびている。
やがてSEととともにメンバー+ストリングスの計8人が登場。畳野彩加(Vo,Gt)が「今日は特別にChamber Setということで、楽しんでください」と挨拶し、ゆっくりとキーボードを弾きはじめ1曲目の「Whale Living」へ。バンドサウンドとストリングスのハーモニーが作り出す荘厳な音色がホール内に響き渡る様子は、思わず息を飲むほどの美しさだ。
そのあとギターを手にした畳野がリバーブのかかったコードを爪弾き、カウントから「Blue Hour」へと続いていく。畳野の透明感のある柔らかな歌声に、福田穂那美(Ba,Cho)、石田成美(Dr,Cho)のコーラスが重なり、やがてストリングスも加わって壮大な音像を作り出していく。
「2013年にはじめて出演してからほぼ毎年呼んでもらって、以前はKBSホールのすぐ近くに住んでいてそこから毎年通っていたのがとても想い出深い」と福富優樹(Gt)が話し、「この街で人を好きになったりいろんなことがあったときに、ずっと聴いていた人の曲をやります」と言って、今年亡くなったダニエル・ジョンストンの「Living Life」をカバー。そのあとも聴く人の心にそっと灯りをともしていくかのように、丁寧に音を紡いでいく。
バンドの初期からボロフェスタに出演した彼らは5年間のうちに大躍進を遂げた。京都アニメーション制作の映画や映画『愛がなんだ』の主題歌を務めるなど、全国区で知名度を上げた。
そんな彼らが3日間の大トリとしてボロフェスタに帰ってきた。ここまでの道のりはきっと楽しいことばかりではなかったはずだ。ボロフェスタは彼らをずっと見守ってきた。そして今日このステージで、それらをすべて内包して美しく昇華させていくようだった。
「ボロフェスタは自分にとってすごく大事なフェスで、今日も大切な仲間がいっぱいいる1日の最後に僕たちを選んでもらって嬉しいです。ありがとうございます!」と福富が語り、温かい拍手が送られた。
「最後は自分にとって大切な曲をやります」
そう言ってラストの「Songbirds」のイントロがはじまると同時に、ステージのステンドグラスが点灯しゆっくりとスクリーンが開かれていった。七色の眩い光に包まれながらエヴァーグリーンなこの楽曲をホール全体に響かせるように演奏する姿は、まるで天国にいるかのような神々しささえ感じさせた。
「本当に今日はいい日でした」
鳴り止まない拍手に呼ばれアンコールに登場した畳野が笑顔で話し、最後は「LEMON SOUNDS」をひとりひとりに届けるように歌い上げた。
Homecomingsとボロフェスタとのストーリーが見事に体現された、感動的なステージでボロフェスタ2019は大円団を迎えた。