骨の髄まで溶かされるステージ
音出しを終えて「the engyでーす！よろしくお願いします！」と山路洸至（Gt/Vo）はすでにナノボロを楽しんでいる様子だ。ちょうど〈ナノボロ2022〉1日目の折り返し、これまで登場したアーティストによってあたためられたホール内。そこに満を持して登場したのはthe engyである。山路の歌声と藤田恭輔（Gt/Key/Cho）のギターから始まった1曲目は“Higher”。彼らをずっと待ちわびていたお客さんたちは、1曲目からすでに思い思いに体を揺らして盛り上がっていた。
濱田周作（Ba）の熱くたぎるようなベースに、一音一音正確で気持ちのよい境井祐人（Dr）のドラム、そこに彩りを加える藤田のギターやキーボード、そしてそれを背中に受けて心地良い歌声を響かせる山路。演奏中は思い思いに自分たちがいちばん楽しんでいるぞ！という熱量が伝わってきて、それが彼らの魅力であると感じた。さすがはthe engy、という感じだろうか。しかし、楽しむだけでなくお互い顔を合わせながらしっかりと心を合わせて演奏する様子も見られて、この安心と信頼のおかげでフロアのお客さんも心から楽しめるのではないだろうか。
最後の曲“Headphones”では、曲の終盤に「あと1分だけ下さい、あと1分で骨の髄まで溶かしていって下さい」と山路が言う。それを聞いたお客さんは大盛り上がりで体を揺らしたり手を挙げたりしてステージを楽しんだ。ライヴ中に声を出せない世の中になってしまったが、声を出さなくてもこんなにも温かくて心から盛り上がることのできるフロアがそこにあることに胸が熱くなった。the engyありがとう！と大きな声で、心の中で、叫びたい。
Photo by shohnophoto
Text by 風希
