新東京

ナノボロ2022
ナノボロ2022

彼らの音楽にずっと没入していたい、素敵なステージ

続いてORANGE STAGEに登場したのは、メンバー全員が現役大学生というギターレス4人組バンド、新東京。2021年に結成されたまだ若いバンドだ。彼らをひと目見ようと集まった観客の年齢層もまた若そうだ。その雰囲気からは期待値の表れが感じられる。

1曲目から早速彼らのデビューシングルかつ代表的アンセムの“Cynical City”が演奏され、フロアはノリノリに。ドラムが刻むリズムとベースの低音、キーボードのスパイス的要素は、体を揺らしたくなるには十分なエッセンスだ。ラストのサビ前の間奏では、ライヴならではの長めのセッションが繰り広げられ、それぞれの心地良い音色に、そして彼らの音楽にずっと没入していたい、そんな感覚に陥った。

「素敵な日にしたいのでみなさんよろしくお願いします! 」と述べ、杉田春音(Vo)の優しく色気がありつつも儚げな声が際立つ楽曲“ユートピアン”では、「ユートピアン前途もケセラセラ洋々 ユートピアン 明日も徒然にのうのう」とリズミカルに耳心地のよいフレーズが繰り出される。前半のMCでは、東京からはるばる車で来たがこれからまたすぐに戻るという話に。それもそのはず。彼らは明日8/21、〈SUMMER SONIC 2022〉のソニックステージにオープニングアクトとして出演するのだ。この報告に会場からはどよめきがあがる。「去年の4月に結成したんですけど、結成時には考えられないようなことが沢山起こっていて、みなさんには感謝しています」と感謝を伝える杉田。確かに、バンド結成からわずか1年半弱の快挙だとも言える。しかし、この事実は高い演奏技術に裏打ちされた彼らの確かな実力であり必然とも言えるのではないか。

新東京は、メンバー全員が全身を大きく使ってリズムをとりながら楽しそうに演奏しているのが特徴的であり、大きな魅力だと感じた。後半のMCでは、10月から始まる東名阪ワンマンツアーの呼びかけをした後、「ありがとうございました! あと2曲やって帰ります! 」と“Garbela”。キーボードのゆったりしたメロディが響き渡る中、変調しポップな雰囲気に。裏声も織り交ぜた歌声に、思わず足でリズムをとってしまう。最後に演奏された“36℃”では、儚い歌詞も相まって会場が温かくも熱い空気感となっていく。終盤に向けて上がっていく会場のボルテージを受け入れつつ、「素敵な1日を! 」と言い残して彼らは颯爽とステージを後にした。

1曲の中で様々な表情をみせる彼らの音楽をずっと聴いていたい。そして、彼らの快進撃はまだまだ続く。だからこそ、私たちも負けじと彼らに今後もついていきたいと思わされるステージだった。

Photo by shohnophoto

Text by キムラアカネ