Limited Express(has gone?)

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Photo byリン
Text by梶原 綾乃

音楽が、ライヴが、ボロフェスタが、死んでたまるか!

音楽が、ライヴが、ボロフェスタが、死んでたまるか!

サウンドチェックで温まった会場。リミエキから「フロアはどうだ?」と聞かれてるような気がした。その熱いに応えようと観客は大きく手を挙げた。今日は声が出せないけれど、お互いに気合が高まっているということを確認し合う。いい、これこれ、この感じ。これでこそライヴで、フェスだという気持ちになる。

もう何度もリミエキのライヴを観てきたと思うけれども、こんな状況で観ることになるなんて、だれが予想できただろうか。彼らは、世の中を分断する出来事にはNOと言い、弱い者には共感の意を捧げ、やさしく手を差し伸べてきた。これまでとはまったく状況が異なる中でも、YUKARI(Vo)は真っ直ぐに口を開いた。コロナ禍で、分断とか、めっちゃいろいろなことがあるけれども、選挙に行ったりしよう、いろいろなことに関心を持っていこう、私ももっと政治を勉強するからと。

そして始まったのは「WELCOME TO MY HOUSE」。感情のレバーを引いたら取れちゃったくらいの、大騒ぎが始まる! すべてのパートが全力の音で観客にぶつかってきて、さっそく圧倒されてしまう。観客も負けずにその音たちに立ち向かっていく。「Mother Fucker」では、もんでんやすのり(Dr)の力強いドラミングと、YUKARIのくねくねとリズミカルなフロー、こまどり社員(sax)の強打な連符がダンサブルなムードの会場に響いた。

「ステートメントとか、もういらんよ!」というYUKARIの掛け声から始まった「No more ステートメント」。思わずコール&レスポンスしたくなるような気持ちをぐっと堪え、舞台上のメンバーたちに託す。JJ(Gt)が力強くジャンプしながら歌唱する姿も、エネルギーに満ちていると思った。
途中、谷ぐちやJJが「ステートメントを出すこと」への意見を、観客やYUKARIに対して発することがあった。それは、リミエキ内での意見の衝突というよりは、アーティスト個人それぞれの立場でみた考え方の違いの表明であり、決して観客すべてに一律で押し付けている意見ではないんだと考えさせられる。それぞれに、それぞれの考え方があっていい。ダブルスタンダードであってもいい。張り詰めたSNS社会をぶった切ってくれたような気がして、なんだかスカッとしてしまった。

そして、この現実をファンタジーではないと言い切り「これはファンタジーじゃない」、YUKARIとJJのWヴォーカルでもって、この世の中の静寂と不安を歌い上げる「The Sound of Silence」のカヴァーなど、リミエキ流の力強さと包容力でもって痛快にこの世を歌い上げていく。そして再び、「ギャーギャー騒げ」で会場の熱量を引っかき回し、「フォーメーション」でテンションは最高潮に。YUKARIはビールケースをステージに配置し、登って、こちらの様子を伺うように歌う。それはかつて、ステージ中央の脚立の上で自由に歌っていた彼女を思い出させるものがあり、胸が熱くなった。観客との距離は昔ほど近くはないけれど、心はすぐそこにある、間違いない。

その熱量のまま後藤まりこがゲスト登場し、最後に「Live or die, make your choice」を絶唱。シンバルを叩いたり、ビールケースに登ったりと、自由奔放な2人は相性のよさを感じた。ステージを降りたり、思うように暴れ回ることができない中でも、最大のパフォーマンスで会場を感動させた。2人の“死んでたまるか”の絶叫は、この世界への最大の反抗であり、そのままボロフェスタのメッセージともなって、会場中に響いていた。