SuiseiNoboAz

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Photo byりん
Text byshohnophoto

ストーリー性あるライヴの最後は、もはや総合芸術だった

衝撃的なライヴを目の当たりにしたときに限って、言葉が出ない。
これはもはや日常の中ではありふれたことだ。

会場にいた大多数のひとがこの先出会うことのない世界を目の当たりにしたのだ。
あの曲の世界観と、KBSホールを象徴する巨大なステンドグラスの横断幕が開いていく光景が重なった瞬間は、もはや総合芸術の域に達していた。

彼らが奏でたアンサンブルは多くのひとを虜にし、
壮大なスケールのライヴで僕らを魅了してくれた。

2020年12月8日に『3020』をリリースした彼ら。
コロナ禍にリリースされたわけだが、石原正晴(Gt.Vo)が抱く未来に対する希望。
反対にコロナ禍における現在の社会に対しての憤りや、葛藤が彼の詞に紡がれている。

そんな彼らのライヴは、最新のナンバー「3020」から始まった。
石原の口から繰り出される迫力満点のフローが、3020年という相手に向けて叫ばれる。
「この道の先に何も見つけられなくても新しい音楽は始まるさ」。
未来への期待感を漂わせる歌詞が、オーディエンスをエモの世界に引き込む。

「ありがとう!」と手を高々にあげ、パワフルなベースイントロから始まる「月面源流釣行記」へと物語は渡る。
「3020」とは違って、哀愁を感じるメロディーラインが迷宮の世界へと僕らを連れ出す。

独特のリズムでこなし、3曲目終わりに石原がマイクをとる。

「音楽は時間と空間を共有して届く。」

音楽の役割を根本から定義する、石原の真摯な姿勢が垣間見えた瞬間だった。
高野メルドー(Gt)がピアノへと楽器を乗り換え、ライヴは4曲目の「それから」へ。

ピアノの伴奏が入ったことによって石原の詞が讃美歌のように変化した。

「3020」から始まった彼らのストーリ性あるライヴもラスト2曲。
石原にスポットライトが当たり、始まった5曲目は「liquid rainbow」。
河野“Time Machine”岳人(Ba)と松田タツロウ(Dr)の息の合ったタイム感から繰り出されるグルーヴ。
そこに高野の心の奥底に訴えかけてくるようなギターと石原の詞が追い打ちをかけてくる。

「ON GUITAR!高野メルドー!」
石原の掛け声からエンジン全開の高野がギターをかき鳴らし始まる「PIKA」。

会場は白い照明の世界に包まれ、曲は進行していく。
精霊が舞い降りてくるような世界観といい、不思議なことに天国にいるような気分だった。
そしてラストのサビになると、KBSホールの横断幕が開いていく。
その演出に驚き、楽しそうに演奏する高野が何とも印象的だった。
徐々に姿を現していく巨大なステンドグラスと「PIKA」の世界観。
この先見ることのできないであろう完璧な演出は、もはや総合芸術の域に達していた。

全6曲。最高のエンディングで締めくくったSuiseiNoboAz。
リスナーに問いを投げかける彼らのブレない世界観。
これぞ彼らの音楽であり、表現なのだ。
そしてこれからも変わらず彼らの音楽は残っていくだろう。