CuBerry

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Photo byりん
Text by石上 温大

研ぎ澄まされた歌と映像で時代に挑み続ける4人のストーリーテラーたち

ナノボロフェスタ2021、GREEN STAGEのトップを飾ったのは、脈々と続く京都シーンの系譜に現れた明らかな才能!同級生+姉妹+従姉妹で構成される新生ライオット・ガール・バンド「CuBerry」だ。バンド名でもある「キューベリー」という妖精を中心とした世界観を軸に、言葉・音楽・物語を通してメッセージを発信するアートユニットであり、ナノボロフェスタには2年連続2回目の出演だ。

これまでのCuBerryの柔らかいイメージとは違った、ソリッドで渋いサウンドのイントロからスタートした1曲目「青い城」で、CuBerryのステージの口火が切られた。Setsuka(映像、ビジュアルイメージ、作詞)の制作する映画「青い城」に登場する女の子の気持ちを歌っており、それは憂いを帯び、悲しみを内包するようにブルーな部分が全編を覆っていた。美意識に貫かれたサウンドとKanaco(Vo、Gt)の凜とした歌声が観る者をSetsukaが作る物語の中へと誘う。

続けてまだ未発表の新曲を披露し、「あの日失った青い城」と歌う歌詞世界から「青い城」の続編を想起させた。

「少年」に続き、「TWINE」では、バンドのグルーヴをどこまでも高めていく後奏が印象的で、曲のしばしばに60年代~70年代の英米ロックへのオマージュが感じられる上、演奏そのものも骨太でパンキッシュだった。

独自のメロディーと浮遊感が曲ごとに違った側面を見せ、差別・難民・貧困・LGBTQ、分断・対立・混乱に揉まれる時代の混沌の上で優雅に浮遊する妖精「キューベリー」には陰影を孕む柔らかい輝きが宿っていたように見えた。

ラストの「DOOR」では、ポップでメロディアスなイントロのギターリフから、透明感のある幻想的な音像が場内を支配し、昨日までのことはもうどうでもよくなるほど多幸感が溢れ零れていた。3人の音が寄り添いながら感動的に歌を彩り、オーディエンスはCuBerryが提示する世界観にどっぷり浸っているようだった。

新しいサウンドに挑戦したことで、スリーピースバンドとしての表現の幅に広がりを見せ、実に色彩感に富んだ楽曲で構成されていたライヴだった。研ぎ澄まされた歌と映像で時代に挑み続ける彼女たちの次なる物語にも要注目だ。

筆者としては、ずいぶん久しぶりにライヴに来て、ライヴを演ったり、観たりするということは、世界に希望を持っていることを表明するような行為だと思った。この世界には、ライヴでしか得られない情動や感動があるのだ。「捨てたもんじゃない」と、生のバカでかい音が表して見せてくれたようだった。