ズーカラデル

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

彼らは今日も全部まるっと愛してくれる。

今年はマリオワールドのオープニングで<ボロフェスタ2023>がスタート。カントリーを感じるSEによって駆け出したくなる平和な空間に包まれたKBSホールORANGE SIDE STAGEに全員柄シャツで登場したのは、2019年以来4年ぶりの出演となったズーカラデルだ。

「ゆっくりゆっくりあがってまいりましょう!」とターキーチューンの「ビューティ」からライヴは始まり、原曲より早めのギターカッティングによって生の音楽だからこそ感じられるワクワク感、そして、「今年もこれからボロフェスタが始まるんだ…!」という気持ちが高まる。
「君は僕だけのビューティービューティーだ」と歌い上げる吉田崇展(Vo&Gt)の優しく安定感がありつつも太く芯のある歌声がスッと心に染み渡ってくる。続く「シーラカンス」では、ピンクのジャケットが似合う鷲見こうた(Ba&Cho)が山岸りょう(Dr&Cho)のリズムに合わせて口ずさみながら、歩き回りながら、そして時にはジャンプしながら、自由に音楽を楽しんでいる様子が微笑ましい。この曲の「時々全部嫌になって 次に日には全部愛しくて 僕らはずっと騒いでいたい 何千何万回だって」という歌詞に何度元気付けられてきただろうか。ラスサビではオーディエンスの温かい手拍子も重なり合い、彼らが私たちの生活の一部に存在してくれる安心感を感じずにはいられない。音の繋がりがあたたかいハーモニーや歌声。そして、それを支える骨太でバチバチな楽器陣もズーカラデルの魅力だろう。そんな彼らとこれからも一緒の“未来”を歩んでいきたい。

MCにて、「今日から楽しいお祭りが始まるけれど、我々もステージ上で各々自由に楽しむから、皆さんも周りに合わせることなく自由に楽しんでほしい!」と話す鷲見。どんな楽しみ方でも受け入れてくれる彼らの音楽や人柄は、今日も素敵だった。
「まだまだ夜は長いけれど、きっとこれからステージに立つどのアーティストもあなたのことをできるだけ離してしまわないようにしようと思っていると思う」と吉田が話し演奏された「ブギーバック」では、「今夜はあんたを離さない できるだけそうしたい」(”ブギーバック”の歌詞より)とゆったりしたメロディで語りかける。「新しい曲を演奏します!」と宣言し演奏したのはつい先日に両A面デジタルシングルとしてリリースされた「秘密」。「がたがた震える夜だって 星なんて見ちゃったりして」(”秘密”の歌詞より)と韻を踏む歌詞がこれまた心地いい。
ズーカラデルの音楽は、「日々の生活の中で、誰か大切な人を想ってたり、何かどうしようもなくなったときでも、それはそれで仕方ない、そのとき考えよう。どうでもいいや、ではなく、どうにかなるさ」と私たちに語りかけてくれる気がするのだ。

吉田の声がスローに響き渡る入りから始まった「漂流劇団」では、オーディエンスも一緒にと合唱し、彼らにしか作り出せない幸せ空間で溢れている。そして、山岸のバスドラの音が響き、弾むカウントと共に演奏されたのは彼らのアンセムソングともいえる「アニー」。“YOU AND I あなたと私”僕らの世界を歌い上げる。醒めてほしくない夢の中にいるような気持ちで、鳴り止まない音にワクワクする。
日々の幸せな瞬間も、誰かと喧嘩して落ち込んだ日も、ひとり寂しい夜も、全部まるっと愛してくれるズーカラデルがいてくれて嬉しい。これからも彼らの音楽とともに、ときに泥臭く人間くさく世界を生き抜いていきたい、と感じさせられたトップバッターであった。

Text by キムラアカネ

Photo by ウチダミサキ