豊田道倫 & New Session

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

スタイリッシュな渋み

窓のない街の底ステージだが、場内にほんの少しまどろんだ雰囲気が立ち込め、夜を感じさせる時間となった。
とろみのあるステージに照明が点灯すると同時に、「アンダーグラウンドビーチ」の演奏がスラッとはじまる。
パラダイス・ガラージとしても長年活動している豊田道倫がバンド編成で登場だ。

「アンダーグラウンドビーチ」のクライマックスにかけて存在感を放つのは、ゑでぃまあこんやGOFISHで活動している元山ツトムのスチールギターである。
彼らの顔に刻まれたシワは喜怒哀楽以上の表情を刻んできたことを表すように深く、楽器を持つ手はゴツゴツしていてどっしりとした貫禄を感じる。

mess/ageでも活動しているKahn Brownの鋭いギターと蒼い石でも活動しているveneのイカついドラムが鳴り響く「Tonight」。
音楽で表現活動をし人生を長く歩んできた価値はあるのかを問い続ける姿に、経験が積み上がっていない私は息を呑んだ。5分程の間にプレイヤーの生活が映る音楽で経験値を得ることができるから、音楽を聴くのは止められない。

ラスト曲「グレイブヤードのテーマ」では、明明後日でも活動しているみのようへいのベースと「ワン・トゥー・スリー」を合図に情動は淀みから明快へとスイッチし、そのメリハリがスタイリッシュで渋い。

テーマの途中で、5人でハーモニカを吹き合い、豊田道倫が今日セッションした4人の名前を呼ぶ。
目配せしながら、音楽を原点で楽しんでいるように映る5人の夜は美しかった。

Text by 小池迪代

Photo by 吉田結衣