体の芯から熱くなる圧巻のステージ
ホールを断ち切るようなサウンドでフロアは一瞬にしてアクセルがかかる。満を持してリミエキのライヴがスタートだ。
「毎年ここでやるのが一番緊張するんです」とYUKARI(Vo)は話すが、
さすがはパンクロッカー、メンバー4人が鳴らす音を背に天を仰いで全力でシャウトする。リミッターなんてそんなものはじめからない。
1曲目から「This world is too small for me」。
JJ(Gt＆Vo)のイントロから待ってましたとばかりに踊り、荒れ狂い始めるフロアでは、大暴れの前方につられ後ろの観客も思わず体を揺らしている。
スピーカーに飛び乗って、少しでも高いところから一番後ろまで全力でエネルギーを届ける。
YASUNORI MONDEN（Dr）の高速なのに安定感のある力強いドラミングも一発目からキレキレだ。
ステージ上では飽き足らず、フロアに降り、マイクを片手に縦横無尽に駆け回るYUKARI。
パワフルな声はホールに響いているのに、ボーカルの位置が見当たらない。
気づけばどこからか絶叫が飛んでくる。決して耳を塞ぎたくなるような音ではなく、思い切りが気持ち良い。
KOMADORI（Sax）の音がより高揚感をあおり、体の芯が熱く、ふつふつと煮え立って体が衝動的に動かされる。
さらに曲は続いて「No more ステートメント」。
JJの変則的なギターリフと、JUN TANIGUCHI（Ba）とYASUNORI MONDENの速く細かいながらに正確なリズム。
YUKARIのパッションを最大限に生かしている演奏だ。
途中のMCでは、「世界には戦争とか紛争とか殺しあわなきゃいけない人がいて、それを知って、一人一人が情報を注視して殺しあうのをやめたい。まずは隣にいる人を大切にする気持ちから」とYUKARIは語りかける。
自分の周りのことを全部理解するのも難しいのに、世界のことを理解するなんてイメージもつかないが、まずは知ろうとするところから、自分になにができるのか考えようと、彼女の言葉が私にそう思わせてくれた。
彼女は再びフロアに降り、飛んで踊って、KBSホールはもうもみくちゃ。マイクを投げ捨てお客さんとハグした後、もう一度平和について問う。
「だってさ、平和になったらよくない？みんなが自分だけがいいってならなければ良くない？」
「ボロフェスタで得してるでしょ」と振られたこのフェスの代表でもあるJJ。
それに対し、「本当に、22年間やらせていただいていて一番得してます。毎年違う景色を見せていただいています」と話す。
コロナで思うように声が出せなかったり、マスクを外せなかったり、動くことができなかったり、そんなことも続いたここ数年間。
またこうして我々が踊れるのは、リミエキが今までボロフェスタのステージを守ってきてくれたおかげでもあるだろう。
ラストは「ギャーギャー騒げ」、今年のボロフェスタの演出の要であるマリオの旗まで登ったYUKARIは、最後までホール全体をアクセル全開で走り抜けた。
Limited Express (has gone?)、下から彼らを見上げる景色も最高だったんだから、上から見た景色はきっともっと最高だったに違いない。
Text by 大井優
Photo by コマツトシオ
