生活の設計

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

出会いと別れ、それが生活

ボロフェスタの主宰・MC土龍の開幕宣言を終え、1日目から熱狂の渦の中心となっていた街の底STAGEもスタート。
2日目のトップバッターを務めたのは、生活の設計。
生活の設計にとって、拠点となる東京から離れて初の遠征ライヴ、そして京都での初演奏となるステージは、キーボードに眞崎康尚 、パーカッションに關街を迎えた5人編成で展開された。
初遠征ライブを手離しで喜びたいところではあるが、同ライブはベースを務めてきた辻本秀太郎(Ba&Cho)の最後のライブとなった。

出会いと別れがフロアで交差する中、放たれた1曲目は「雨の匂いはメッセージ」。大塚真太朗(Vo&Gt)の黒色のテレキャスターは、緑色のライトに照らされ、雨に濡れた木々のような深緑にも見える。
大塚真太朗の弟でもある大塚薫平(Dr&Cho)とパーカッションが、アップテンポなビートを刻みながらも、キーボードはどこか寂しさを漂わせていた。

続いて演奏された春の歌「春にして君を離れ」では、青空と桜のようなカラーの照明が私たちを過ぎ去った季節へと誘う。別れと大切だった相手への幸せを願う思いを歌った同曲は、メモリアルなライヴを眼前にした私たちの感傷とリンクした。

ムーディーな雰囲気に会場が包まれた「昼に起きれば」、大切な人や会えていない人に思いを馳せたくなる「最近どうなの」を終えると、大塚真太朗は「音楽が大好きな皆に捧げます!」と宣誓。フロアだけではなく、今日という日に集った全ての人に向けられたその言葉の後、“レコードの日”であるまさに昨日、7インチレコードとしてリリースされた2曲「むかしの魔法」と「キャロライン」を演奏しライヴを締め括った。

フロアを見渡すと老若男女が揃っていた生活の設計。それは、どこか懐かしさを感じさせるような楽曲群と“生活”を歌った身近な歌詞に多くの人が共感しているということだ。

KBSホールまでの道のりの木々は少しずつ、赤や黄色に色づき、確かに季節は秋へと移り変わっている。しかし、ボロフェスタ2日目のぽかぽかした天候のように温かい雰囲気が漂っていた生活の設計のライヴは、“出会いと別れ”の季節でもある春を想起させた。

Text by 横堀つばさ

Photo by リン