俺たちのULTRA CUB！！
2日目のGREEN SIDE STAGEのトリを飾るのは、俺たちのULTRA CUB！パーティー・ナビゲーターである土竜の「皆さんの心と耳に絶対届くバンド！！」と熱い声援を受け、ステージが始まった。カーミタカアキ（Vo&Gt）はギターのネックを握り直し、「間違いない」と小さく、しかし誇りを持って呟いた。
「輪廻転生してる暇ない」(“初恋霊的衝動”の歌詞より)と、カーミの歌が真っ直ぐに届けられる。不器用で、でも人を愛していたいという歌だ。実ることのない恋を、恋になる前の恋を、伝えられないこの気持ちを成仏させてくれる歌だ。
機材トラブルが起こったかと思われたが、「これをバネに成長しちゃっていいですか」と新曲「アンビューティフルダンサー」を無事披露する。会場では「ラララ」と大合唱が起きた。稲毛僚也（Dr＆Cho）の力強いドラムがグルーヴを作り出していく。次に「あの娘がセックスしてるなんて俺は絶対信じない」ではありったけの感情を込め、メンバーもオーディエンスも全員でシンガロングする。上村孝太（Gt＆Cho）は台の上に乗り、アグレッシブにギターを弾いた。
MCではカーミがタクシーの運転手との会話に触れ、「フェスに出るんすよ、いちばんかっこいいイベントに出るんすよ。皆さん、いちばんかっこいいイベントに来てます！」と会場を盛り上げた。そして「ULTRA CUBはホストバンド。ボランティアスタッフも全員スタメンってことです。見に来てる人もね！改めて音楽と人が大好きだということを思わせてくれるフェス！」とカーミの言葉で伝え、「ネイキッドファイヤ」と「光の唄」を届けた。清水佑（Ba＆Cho）は目を閉じてのけ反り、咆哮するベースアクトで魅せた。
「最後のほうなんですけど、自己紹介しますね」とカーミが話すと、そのまま「愛を呼ぶ愛してる愛を叫んでるケモノ」をただがむしゃらに、怒涛の勢いで搔き鳴らした。拳を高く突き上げるオーディエンス。カーミはいま目の前にいる、“あなた”の味方であり続ける。それはULTRA CUBが「一生YOUTH、正義のロック」であるからだ。ラストには「GRAND THEFT YOUTH」をKBSホールに響かせた。清水は台の上から高く飛び、カーミは噛みしめるように歌う。「最高や、ありがとう」とやりきった表情でステージを去った。
ULTRA CUBのライヴを初期衝動だとかエモーショナルだとかそういった言葉で形容したくないし、できるものでもない。ULTRA CUBが他のバンドと一味違うのは、濃密な春の匂いがするバンドだからだと思う。「決して奪えないように春は燃やした」(“GRAND THEFT YOUTH”の歌詞より)、「一生春の夢の中で僕をどきどきさせる」（”愛を呼ぶ愛してる愛を叫んでるケモノ”の歌詞より）のように、きっとカーミのなかで恋とは春なのだろう。掴めるようで掴めない、春の霞のようなものだからいまだにあの日の幻影を追うのだ。ULTRA CUBは全てのかつて若者だった”あなた”と、いま若者である”あなた”をきっと救う。
Text by 松下愛
Photo by shohnophoto
