SADFRANK

ボロフェスタ2023
ボロフェスタ2023

街の底に、風が吹いている

陽も落ちはじめ、二日目も終盤。光の届かない街の底ステージがひと際暗い照明によってアンニュイな雰囲気に包まれる。

2022年から本格的に始動した、NOT WONK加藤修平によるソロプロジェクト、SADFRANK。昨日NOT WONKとして4年ぶりにホールに登場し、リズム隊とともに圧巻のパフォーマンスを魅せた加藤が、今日は一人でステージに降り立った。昨日とは打って変わった雰囲気に、いったいどんなものを魅せてくれるのか。期待感に満ちた、そんな街の底。終わって一言でいうと、その期待を全く裏切らなかった。

バンドから飛び出した加藤が作り上げたのは、全曲日本語歌詞の楽曲たち。メロディもシンプルな分、日常の隙間を縫うような繊細な歌詞が一つ一つ胸にしみこんでくる。

“お前もまた臆病な風になって 部屋を吹き抜くとき ただひとつだけ連れてって”
(“per seの歌詞より”)暗いフロアにぽつりと浮かぶ照明、締め切っているはずの部屋に加藤の心地よい歌声で風が吹いている。

最後は「肌色」で幕を閉じたSADFRANKのステージ。テンポを変えながらも、終始ゆったりとしていて、フロアはいっぱいなのにどこか解放感で満ち溢れた居心地の良い街の底。
まだまだ終わらないでくれ、ボロフェスタ。

Text by 大井優

Photo by リン