崎山蒼志

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

目が、脳が醒めていく。ギター1本で披露されたステージ。

ボロフェスタ3日目、お昼も過ぎた13時過ぎ。KBSホールに入ってくる人が後を立たない。
観客が今か今かと待ち構えるORANGE SIDE STAGEに登場したのは、崎山蒼志だ。

ギターが1本、ぽつんと置かれたシンプルなステージに、いつものようにサディスティック・ミカ・バンドの「よろしくどうぞ」を流しながら崎山が登場すると、会場からは待ってましたと言わんばかりの拍手が起った。

冒頭から挨拶がわりとでもいうようにスキルフルなギターをかき鳴らし、揺れのある歌声で会場を飲み込んでいく。崎山のパフォーマンスが始まると脳が醒めていくような、耳や目の感覚が研ぎ澄ましていくような気さえした。一秒たりとも聞き逃せない音楽に、観客の集中力も増していく。

音が鳴っている時とMCで話している時のギャップも崎山の魅力のひとつだと思う。MCでは今日、京都の街並みが目に入った時に「あぁ、京都だったなと思いました」と緩いトークを披露。約4年ぶりに京都に来たことを喜んだ。後半のMCでは「素敵なステージで嬉しいです。見てくれる人もありがとうございます」とボロフェスタと観客に感謝を伝え笑顔を見せた。

アニメタイアップにもなっている「嘘じゃない」、石崎ひゅーいとの共作曲「告白」を披露すると会場はやわらかい光に包まれる。続く「国」では、思わず駆け出したくなるような軽やかなギターのメロディに、崎山の表現の幅広さを感じた。

殴るようなギターの一音をきっかけにはじまったのは、崎山の代名詞とも呼べる「Samidare」。見逃せない、聞き逃せないパフォーマンスに客席の温度も静かに上がっていく。時には頭を振りながら、時には跳ねながらギターを弾き、間奏にはステージ後方、高い天井から垂れるカーテンを見上げるような場面もあった。

ギターと声、それだけのはずなのに何重にも重なって聞こえる音の厚みに終始圧倒された。
その体のどこに、ここまでのエネルギーが詰まっているのか不思議だ。演奏が終わっても拍手は中々鳴りやまなかった。

Photo by ウチダミサキ
Text by 奥野ひかり