キーマカリーズ

ナノボロフェスタ2020
ナノボロフェスタ2020

Text by マツノミズホ
Photo by 廣瀬有美

弾丸のように駆け抜ける演奏。
若者のパワーをみせつけたキーマカリーズ

ナノボロフェスタ2日目、Foever Liveステージ二番手として登場したのは、キーマカリーズ。
GEZAN主催イベント「全感覚祭」にも出演経験がある若手バンドは、ベテラン、ワッツーシゾンビのあとでも、圧倒的な存在感をみせた。

2020年はキーマカリーズにとって、変化の年であろう。バンド名改名、新メンバー・強力(Ba)が加入し、5月11日には2曲入りAnalog EP『Pale lives.Bright Progress.』をリリースした。

そんな彼らの1曲目は「Tiny Fouling」。強力(Ba)の和音が美しく鳴るなか、ゴツロー(Gt) の激しいギター、ヨシアキ(Dr)の弾丸のドラムに、だいせい(Vo)が歌を叫ぶ。
そう、だいせいは、「歌う」というより「叫ぶ」という言葉を使いたくなってしまうほど、内側に溜っている感情を吐き出すのだ。彼のエネルギーは計り知れない。ホールを暴れまくる彼に、危うさすらを感じた。そんな、ライヴ・パフォーマンスに対し、「ゆっくり話すから聞き取って欲しい/感じ取って欲しい/上がるだけじゃなくて落ちてから上がる」と、繊細でひどく共感できる詩的な歌詞が歌われる。

MCはなく、気怠そうな声で曲名を紹介しながら、ライヴは進んでいく。3曲目は、『Pale lives.Bright Progress.』に収録されている「暮らす」。1分30秒ほどの長いイントロ、弾丸のように駆け抜ける演奏は変わらないが、シンプルな音がより歌を引き立てている。
4曲目「コロナ」、ストレートな曲名に驚いた。しかし、だいせいはほかの曲と同じように、そのときの気持ちを日記のように、曲という作品に残しているのである。
どの曲も破壊力を持ち合わせている。非日常を現したような楽曲に、日常の気持ちを叫ぶ。こんなバンド見たことがない、会場が興奮している。

6曲目「Irie」が終わったころ、最初と比べ、明らかにキーマカリーズを観る人々の顔つきが変わっていた。危ういながらも、もがき日々を生きている若者のパワーに圧倒され、惹きつけられていた。
最後は、疾走感と、突然のブレイクからの更なる暴走感が癖になる「透明」。計7曲演奏し終えた彼らには、これからの活躍を期待するかのような、温かい拍手が送られた。

楽器陣の演奏と歌がそれぞれ独立しているようで、共存している。彼らの音楽を一言で説明するのは難しい。だから、ぜひ、キーマカリーズの生のライヴを観てほしい。2020年、新しいシーズンに突入した彼らの更なる躍進が楽しみで仕方がない。