ゆうらん船

ナノボロフェスタ2021
ナノボロフェスタ2021

Photo by関 ゆかり
Text by梶原 綾乃

ゆうらん船であり、旅団のようでもあった

ナノボロフェスタ初日も後半戦!
京都初登場のゆうらん船が、GREEN SIDE STAGEに登場した。
フォークやカントリーなど、古き良きエッセンスを兼ね備えた5人組だ。

内村イタルと聞くと、筆者はソニーのイベント「閃光ライオット」を思い出すのだが、それももう9年前。2016年にゆうらん船を結成し、2年前にはフジロックのルーキーステージも経験しているし、着実に歩みを進めているのがわかる。

「初登場、やってまいりました〜」と、ゆるやかな内村の声から「ラブソング」。しょっぱなから大きな音で観客を圧倒し、どんどんと空気を塗り変えていく。ステージ左の永井秀和(Pf)と、右の伊藤里文(Key)による2つの鍵盤が、楽曲に巧みな彩りを添えているのが印象的だ。内村イタル(Vo/Gt)の歌声は透明感がありながらも、想像よりも力強く、ぐっとこちらの心に迫ってくる。急にぴょんっと飛び跳ね動きを始める本村拓磨(Ba)の躍動感あるベースプレイにも、つい注目してしまう。

MCでは、本来ならば昨年のツアーで京都も周る予定だったが、コロナの影響で中止になってしまったという話に。初の京都公演は、1年の時を経てナノボロフェスタとなったようだ。

続いては、最新のアルバムから「Chicago, IL」。内村のみずみずしい歌声が、ふわっと空間に溶けていく。耳ざわりのよいパーカッションと、きらびやかなキーボード。それらがいつの間にかスペイシーな音にトリップしていって、ドラマと発見に溢れた1曲だった。そして「鉛の飛行船」でもまた、彼らのポテンシャルに驚かされる。会場は静寂につつまれ、重くてローなキーが響き渡ったと思いきや、鍵盤からは突然意外な音が飛び出してきたりと、とても実験的。数秒先を確かめるように、スローに放たれる砂井慧(Dr)のタムの音色もまた、ぐっと世界観を演出している。

リアルタイムに新しいサウンドを追究し、現段階で最高の音を作り出す。ゆうらん船にはそんなセッション・バンドとしての余裕と実力を感じた。彼らは楽しくゆるやかに進むゆうらん船でもあるし、音楽で世界を旅するさすらいの旅団のようでもあった。
「また来ます!」と話していた内村のとおりに、またぜひ京都に来てほしいし、ボロフェスタでまた会いたいと思った。