Age Factory

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

一瞬で、ワンマンのような満足感を得た

「Ageでお腹いっぱいになったわ。これ以上入らへん」終演後の会場でそんな声が耳に入ってきた。思わず心の中で大きく頷いた。そんな、驚くほど充実した約40分間のAge Factoryのステージをレポートする。

3日目も後半に差し掛かる16時すぎ。ORANGE SIDE STAGEに登場したのは奈良発のロックバンドAge Factoryだ。一曲目の「OVER」はメンバーが向かい合いながらギター・リフにドラム、ベースの音が重なっていく。真っ赤な照明に照らされたステージで奏でられる彼らの骨太なロック・ミュージックに、自然と体が揺れてしまう。「ボロフェスタ呼んでくれてありがとう」という清水英介(Vo/Gt)の呼びかけに増子央人(Dr/Cho)は立ち上がり、会場のいちばん後ろまで見渡していた。彼らのライヴが進むにつれ、徐々に振りあがる拳が増えていく会場に思わずにやけてしまう。

「隣の人を気遣いながら、自分の許容範囲の中で踊ってください」という言葉から始まった「Merry go round」では、カラフルな照明がピカピカと会場を照らし、ボロフェスタの会場を瞬く間に遊園地に変えてみせた。

ただ真っすぐにカッコイイ音楽が矢継ぎ早に繰り広げられ、波のように、伝染するように、観客も彼らの音楽に身をゆだね体を揺らしていた。「SKY」が始まるとステージは青色に染まり、ボルテージの上がった観客は空を指差し腕を振った。楽曲に場景が思い浮かぶようなリアルさがあるからこそ、よりライティングが映えていたのも印象的だった。

「みんな楽しいですか?」とMCでは観客に呼びかけながら「音楽好きが集まって作っているフェスだと知っています。出れてスゲー嬉しいです。見に来てくれてありがとう」と笑顔で伝え、「記憶に残らなくても、今日この瞬間を共有できたことを未来まで覚えていたいなと思います。そんな歌です」という言葉から始まった「Dance all night my friends」で会場の一体感も一段と増していく。メンバー全員が本当にいい顔でステージに立っていて、そんな姿を見ていると、聴いている私たちの心が何か暖かいもので満たされていく気持ちがした。

多くは語らないMCに、たたみかけるように紡がれるロック然とした音楽。曲終わりのかき回しはあまりなく、目の前を通り過ぎる電車のように一瞬で遠ざかり、私たちを置き去りにする。その潔さが、彼らの音楽の持つ刹那的な美しさを助長するようだった。

体感は一瞬。お腹はいっぱいである。一度でも彼らのライヴに足を運んだ方なら分かるだろう。間違いなく、癖になるアーティストに違いなかった。

Photo by shohnophoto
Text by 奥野ひかり