bed(from Kyoto)

ボロフェスタ2022
ボロフェスタ2022

「いつか終わるけど、また始めたらいい」

3日目の街の底STAGEのトリを務めるのは、bed(from kyoto)。パーティーナビゲーターの土龍が前説で言うには「街の底復活するからbed出てよ!」という意味のある今回の出演オファー。6年ぶりのボロフェスタ出演、しかも街の底STAGEで。その言葉の並びだけで、どれほどの期待を背負っているのかなんて一瞬で痛いほど伝わってきた。入場前に見た街の底STAGE待機列もとても長くて、彼らがそこでやることを誰もが待ち望んでいた。

1曲目「完璧すぎる」が始まると、会場が水色のライトで染まっていく。静かに湧き上がるような彼らの音はまるで泉みたいで、地下に迷い込んだ私たちのオアシスかのような優しさが届けられる。派手ではないけれど、確実に一音ずつ説得力のある演奏をする彼らに、心がどんどん吸い込まれていった。確かなエネルギーがそこにふつふつと燃え続けているのに決して暑苦しくない。その時感じた不思議な感覚は、パワースポットに訪れた時のそれと同じ気持ちだった。

山口将司(Gt&Vo)は、第1回目のボロフェスタから見にきているというエピソードを話す。これまで続いてきたボロフェスタの思い出に触れ、コロナ禍でバンドとして出られない代わりにソロで出演した経験は辛かった、と語った。この2年の間に何度もソロ出演を経験し「精神的に強くなって帰ってきました!」と山口が口にすると、その場に居たファン全員が嬉しそうにくすっと笑いをこぼしていた。

ラストの曲直前になると、フロアから「音楽最高!」「終わらんといてください!」「まだやってほしい!」と声が上がり続ける。「いつか終わるけど、また始めたらいい」と、それに応える山口。彼らはその場に居た全員に惜しまれながら、最後「僕にはわからない」を演奏し、街の底STAGEを去ろうとしていた。
しかしそこで諦めないのが私たちである。どれほどの思いでこの日を、この時間を待ち続けていたか! やっぱり終わってほしくないという諦めきれない気持ちが鳴り止まぬ拍手となってbedへと届いた。「音楽ありがとう!」メンバーもお客さんもみんなが口々に叫ぶ。なんとも言えない多幸感に包まれて彼らはアンコールに応えてくれたのだった。

こんなにも熱望されていたステージなのに、やはり終わりはやってきてしまう。けれどもまた必ず、彼らは私たちの大きな期待を抱きしめにやってきてくれるだろう。おわりがあるのなら、また始めれば良い。忘れかけていた大切なことを教わった気がした。

Photo by リン
Text by 風希